1970年の開業以来、バンコクを代表する高級ホテルとしてタイ王室や世界中のセレブに愛されてきたデュシタニホテルが、来年6月を以ってその歴史に幕を閉じることが確定的となった。
昨夜、タイの英字メディアBK Magazineが報じたところによると、“デュシタニホテルは、2018年6月30日を以って営業を終了する。その後解体され、住宅、ホテル、サービスアパート、オフィス、小売エリア、そして広大な緑地を持つ複合商業施設として再開発される”と、デュシタニホテルより公式にプレスリリースが発表されたという。

A press release from the Dusit Thani hotel and property-development company confirms operations will continue as normal until Jun 30 2018, after which the building will be demolished to create a “mixed-use” complex, including a renovated hotel, serviced apartments, office space, retail space and dedicated green space.
Confirmed: Dusit Thani hotel will be demolished in 2018 | BK Magazine

開業当時はバンコク最高層のホテルとして、ランドマークというべき存在だったデュシタニ。だが90年代以降、高層ホテルや外資系高級ホテルチェーンの開業が相次ぎ、その存在感は薄れていった。
昨年8月には、同じシーロムエリアにタイ最高層となるマハナコンが開業し、新たなバンコクのランドマークとして注目を集めている。

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マハナコン

マハナコンは地上77階、高さ314mを誇り、これまでタイ最高層だった『バイヨーク・タワー2』を10m上回る。

リッツ・カールトンブランドのコンドミニアム「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス」やホテル「ジ・エディション・バンコク」を始め、ブティックや飲食店などが入居する。最上階にはバンコクの高層ビルではお約束のルーフトップバーや展望台がオープンする予定だ。
タイ最高層の摩天楼、マハナコンが遂に開業! | YINDEED MAGAZINE

このマハナコンプロジェクトが、デュシタニの再開発計画に影響を及ぼしたのかどうかは定かではない。だがこの再開発は、タイ流通最大手セントラル・グループとの共同プロジェクトで、367億バーツ(約1200億円)の総工費が投じられ、その規模はマハナコンより160億バーツ上回るという。

A partnership with Central Group, the mixed-use real estate development is worth B36.7 billion (about US$1.05 billion)—for comparison, that’s about B16 billion more than Mahanakhon.

Confirmed: Dusit Thani hotel will be demolished in 2018 | BK Magazine

デュシタニホテルの思い出

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デュシタニのロビーラウンジ

デュシタニホテルは、タイ独自の伝統様式とミッドセンチュリーを融合した近代タイを代表する建築物としての評価も高く、再開発を惜しむ声が上がっている。皆さんの中にも、デュシタニに泊まったことがある方は多いと思う。
僕がタイに暮らし始めてから、両親が初めてタイに遊びに来た時に泊まったホテルがデュシタニだった。
バンコクでゆっくり読書を楽しみたい日には、1階のロビーラウンジがお気に入りだった。一杯200B強のコーヒーで何時間粘ったことか…
タイ伝統音楽の演奏、開放感抜群の吹き抜け、重厚な柱、全面ガラス張りの目の前に流れる小さな滝。スピリチュアルには疎い僕でも、このラウンジには何か良い気が流れているような気がした。
ラウンジには、時よりタイの富裕層らしき女性たちがお茶をしに訪れる。なぜタイの富裕層は塩沢ときのような盛々のヘアスタイルをするのかと、初めて疑問を持ったのもここデュシタニだった。

デュシタニは、僕にとってバンコクで最も思い出深いホテルなのである。一度も泊まったことはないが…(笑)

念のため、デュシタニホテルの公式サイトで再開発に関わるプレスリリースを確認してみた。

デュシタニからの公式リリース

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デュシタニ公式プレスリリース

詳しくは上記のリンク先からプレスリリース全文を確認していただきたいが、ざっと要約すると以下のような内容だ。

  • デュシタニバンコクは、タイ王室財産管理局との間で、土地のリース契約を30年+30年延長することで合意した。
  • CPN(セントラル・パタナ)と共同で、世界的な有名ホテルとしての地位をさらに高めるため、住宅、オフィス、小売エリア、および広大な緑地を有する首都の新たなランドマークの開発を行う。
  • このプロジェクトが最終的にはバンコクをハイエンドの観光とショッピングの拠点とし、観光地としての世界的な評価を高めてくれると期待している。
  • プロジェクトの計画は現在進行中であり、開発の詳細は年内に確定次第、発表される。

観光やビジネスの中心がスクンビットに移りゆく中で、デュシタニの新たなプロジェクトは、シーロムエリアが再び大きく発展するための起爆剤となるのか。
個人的にはシーロムからチャオプラヤー川にかけてのエリアは、バンコクでも大好きなエリアのひとつ。毎年洗練されていくスクンビットエリアに比べて、いつまでも変わらない昔ながらのバンコクの姿が見られ、どこかホッと落ち着くのだ。

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古き良きバンコクが失われていくのは残念で仕方ないが、観光立国であるタイでは、リピーターの観光客を飽きさせない新たな仕掛けは必要不可欠なのだろう。
営業終了となる来年6月までに、あと何度あのラウンジで読書ができるだろうか。