今週に入り、ようやく乾季らしい涼しさを感じられるようになってきたバンコク。今年も残すところあと10日あまりとなったが、2016年は皆さんにとって、どんな一年だっただろうか。

Yindeedでは、激旨タイ食堂との共催で、オフ会ツアーを3回に渡り開催できたことが最も印象に残っている。

参考記事:

第1回共同オフ会開催レポート!サムットソンクラーム県に絶品の蟹(プーカイ)を味わう旅に行ってきた。

第2回共同オフ会開催レポート! スパンブリーに地鶏の藁焼きを食べに行ってきた。

第3回共同オフ会レポート! ナコンパトムで激ウマの火山エビを腹いっぱい食べてきました。

今年もタイは本当に様々なことが起きたが、ここで皆さんと一緒にこの1年を振り返ってみたい。そこで、「2016年のタイ10大ニュース」と題して、印象に残った10のニュースを独断で選んでみた。

それでは行ってみよう!

この記事の目次


1. プミポン・アドゥンヤデート前国王が崩御

king bhumibol

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10月13日(木)15時52分、プミポン・アドゥンヤデート前国王が崩御。

今年在位70年を迎え、世界最長の在位を誇る国王としても知られていたプミポン前国王。国民からの畏敬と敬愛を一身に集めた偉大な国王を失ったタイ国民の悲しみは、我々外国人には想像を絶するものであったに違いない。

1946年に18歳で即位し、激動の戦後から高度経済成長を経て、アジア通貨危機、政治的混乱、洪水など、幾多の国家的危機を迎えながらもタイの発展と安定に尽力されてきたその功績は計り知れない。

プミポン前国王の時代とは、まさにタイの現代史そのものであった。

プミポン前国王が築き上げたタイという素晴らしきこの国に暮らしている一人として、国父への敬意と哀悼を込めて改めてご冥福をお祈りいたします。

2. ワチラロンコン皇太子が、ラーマ10世として新国王に即位

Vajiralongkorn

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12月1日、ワチラロンコン皇太子がプミポン前国王から王位を継承し、ラーマ10世として新国王に即位した。

当初、プミポン前国王の崩御直後に即位すると思われていたが、「国民と共に、父王の悲しみを分かち合いたい」とのご意向から、即位を遅らせていた。

プミポン前国王も、即位当初から国民から尊敬を集めていたわけではない。数十年に渡り、国に尽くし、国民に寄り添った様々な活動を行ったことで、国民から愛され、尊敬され、国父としての存在を揺るぎないものにしたのだ。

軍事政権下にあるタイは、政治対立や民政への復帰、経済の低迷など様々な課題を抱えている。難題が山積する中で、ワチラロンコン新国王がどのような役割を果たしていくのか。新国王の一挙手一投足が注目される。

3. 8月、タイ南部を中心に連続爆弾事件が発生

huahin bomn

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8月11日からシリキット王妃の誕生日である12日にかけて、王室の保養地として知られるビーチリゾートのフアヒンで立て続けに爆弾が爆発し、2名が死亡、20名以上が負傷した。

爆弾爆破はフアヒンだけでなく、プーケット、スラータニー、トランなどタイ南部の都市で同時多発的に発生し、計8件の爆発があり、4名が死亡、数十名の負傷者が出た。(フアヒン含む)
爆弾爆破だけでなく、ナコンシータマラート市、クラビ市、トラン市、パンガー市では、ショッピングモールや商店街などで放火とみられる火災が発生した。
タイ警察は、軍事政権と観光業へのダメージを狙った同一グループによる政治的犯行と見ている。現時点でも犯人は逮捕されておらず、詳細は明らかになっていない。

参考記事:タイの連続爆弾事件 フアヒン、プーケットで時限発火装置か 携帯電話はマレーシアから? | newsclip 2016年8月15日(月)

4. 新憲法草案が国民投票により可決

thailand Referendum

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8月7日、民政復帰へ向けた新憲法草案を巡る国民投票が行われ、賛成61%で可決された。

政府は、この投票を経て新憲法を制定し、2017年中に議会選挙を実施することで、民政復帰を果たすとしている。
ご承知のとおり、タイは2014年のクーデター以降、軍主導の暫定政権が統治を続けており、新憲法草案も暫定政権の元で策定されている。そのため草案の中身は軍の影響を色濃く残すものとなっている。
特に、民政復帰後の最初の5年間、上院議員は全員任命制で、政治に軍の意向を強く反映できる点と、軍出身者を含む議員以外の人物が首相に就任することを認めている点が懸念されている。
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウでは、「新憲法案によって、軍部が新政権を実質的にコントロールし、影響力を行使できる点について懸念している」として、「タイの新憲法案及び国民投票の手続きについて重大な懸念を表明する」声明を公表している。

参考記事:【声明・和訳】「タイの新憲法案及び国民投票の手続きについて重大な懸念を表明する」声明を公表しました。 | Human Rights Now 2016年8月8日

5. 高速鉄道新路線「パープルライン」が開通

purpleline bangkok

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8月6日、バンコク首都圏を走る高速鉄道新路線「パープルライン」が開業した。バンコク北西に位置するノンタブリー県バンヤイとバンコク北部のバンスーを結ぶ全長23kmの路線となる。

パープルラインは、JR東日本、丸紅、東芝が、車両や信号・運行監視装置、通信設備など鉄道システムの納入とメンテナンスを担当する。まさに、日本を代表する企業が一丸となって受注した日の丸プロジェクトなのである。
だが、その船出は厳しいものとなった。開業直後の9月には利用者数が想定を大幅に下回り、運賃の値下げに踏み切っている。
パープルライン沿線には観光地と呼べるものはなく、我々外国人にとってはあまり馴染みのない路線。ノンタブリーからバンコクに通勤する方向けの路線であり、目的地をしいて挙げるとすれば、セントラルデパートくらいなものである。

参考記事:パープルラインで繋がるバンヤイの巨大モール、セントラルプラザ・ウェストゲートに行ってきた | YINDEED MAGAZINE 2015年12月18日

パープルラインの乗り方や路線にについては以下の記事が詳しい。

参考記事:バンコクの新路線MRTパープルライン、乗り方・路線図徹底ガイド | グロビジ! 2016年9月10日

6. スクンビット等、バンコク都心の屋台街が撤去

sukhumvitPhoto:筆者撮影 軒下に出店するスクンビット通りの露店

10月3日、以下バンコク都内5カ所の屋台・露店街が、バンコク都により撤去された。

  • スクンビット通り(BTSナナ駅〜アソーク駅間)
  • シーロム通り(夜間)
  • BTSサイアム駅下
  • ラチャダムリ通り(セントラルワールド前)
  • プラトゥーナム市場周辺(ラチャプラロップ通り、ペッブリー通り)

今年に入り、ホイクワン・ナイトマーケットの撤去を皮切りに、上記のプラトゥーナム市場周辺、シーロム通りなど、バンコク都内数カ所の露店・屋台に撤去命令が下ってきたが、露店店主らの反対により撤去は延期を繰り返していた。

その反対も叶わず遂に10月3日、路上の屋台・露店はすべて撤去されてしまったのだ。
だが、路上から完全に露店がなくなってしまったかといえば、そうではない。厳密に言えば、路上からは撤去されたが、店の軒下であれば出店は可能のようで、今でもスクンビット通りやシーロム通りでは、路上ではなく店の軒下に多くの露店が出店している。
来年も屋台街の撤去が行われるのか? 動向を注視していきたい。

参考記事:スクンビットだけじゃない! 10月3日にバンコク都内計5カ所の屋台街が撤去されていた。 | YINDEED MAGAZINE 2016年10月5日

参考記事:消えゆくバンコクの屋台街 | YINDEED MAGAZINE 2016年2月23日

7. タイの新たなる最高層、「マハナコン」が開業

mahanakhon

Photo:Shutterstock

8月29日、BTSチョンノンシー駅直結の超高層ビル「マハナコン」が開業し、タイの新たな最高層となった。地上77階、高さ314mを誇り、これまでタイ最高層だった「バイヨーク・タワー2」を10m上回る。

マハナコンには、リッツ・カールトンブランドのコンドミニアム「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス」やホテル「ジ・エディション・バンコク」を始め、ブティックや飲食店などが入居する。最上階にはバンコクの高層ビルではお約束のルーフトップバーが来年オープンする予定である。
開業当日には音と光のショーが行われ、ド派手な演出が話題となった。

タイ語で“偉大なる都”を意味するマハナコン。バンコクの新たな観光名所の筆頭として、多くの観光客が集まることを期待したい。

参考記事:タイ最高層の摩天楼、マハナコンが遂に開業! | YINDEED MAGAZINE 2016年8月30日

8. タイとカンボジア間の鉄道が開通

thai-cambodia train

Photo:Shutterstock

今年の始めに、バンコク−プノンペン間の鉄道運行が2016年末にも開始へ!でお伝えした、バンコク〜プノンペン間の鉄道運行計画。今年9月には、タイ・カンボジア国境(アランヤプラテート〜ポイペト)において、タイ国鉄とカンボジア国鉄の線路の連結が完了している。

参考記事:タイ国鉄とカンボジア国鉄の線路が遂に連結 来年初頭にはタイ~カンボジア間の鉄道が運行開始予定 | アジアトラベルノート 2016年9月20日

ということは開通済みか?というとそうではない。カンボジア側では、ポイペト〜プノンペン間の線路を補修工事中であり、バンコク〜プノンペン間の開通はまだ先になる見通しである。まずは、バンコク〜ポイペトあるいはバッタンバンまでの運行が予定されている。

日本が主導するアジア開発銀行によるこのバンコク〜プノンペン間の鉄道計画の他に、中国が主導するプノンペン〜ホーチミン間の鉄道計画も進んでおり、両路線が開通すれば、バンコク〜ホーチミン間のインドシナ半島横断鉄道が完成することになる。
さらには夢は広がる。中国・昆明〜ベトナム・ハノイ〜ホーチミン〜プノンペン〜バンコク〜クアラルンプール〜シンガポールを結ぶ壮大な東南アジア縦断鉄道も計画されているのだ。
LCC(格安航空会社)の路線が爆発的に拡大する東南アジアにおいて、貨物輸送以外での鉄道での移動は、時間・費用ともに効率は悪いが、「鉄道の旅」という視点で言えば、非常に魅力的なルートである。
ぜひ、実現して欲しい。

9. 大寒波と猛暑

thai-cambodia train

Photo:Shutterstock

2016年のタイは、大寒波で始まった。

1月25日〜28日にかけてタイを襲った寒波で、バンコクでは早朝に15℃、北部チェンライでは-2℃を記録し、全国的な冷え込みとなった。
北部や東北部では、寒さが原因とみられる死者が20人以上に達した。寒さしのぎに飲酒をし、そのまま寝込んでしまい、低体温症や心臓発作を引き起こしたことが原因と見られている。

参考記事:【タイ】寒波で14人死亡 | Global News Asia 2016年1月28日

日本の寒さに比べれば、この程度の気温でなぜ死者が? と思ってしまうが、タイは年間平均気温が30℃前後の熱帯モンスーン気候に属しており、これほどの寒波に見舞われることは稀なのである。気温が20℃を下回ると、防寒対策を取るよう気象庁から寒冷警報が発出される。

日本人としては過ごしやすい気温だが、北部や東北部に暮らすタイ人にとっては死活問題なのだ。
今年は今のところ、乾季に入ったもののまだ暑い日が続いているが、また寒波がやって来るのだろうか。

大きな被害をもたらした寒波が去った後、今度は猛暑に襲われた。

一年で最も暑い時期である4月のソンクラーン(旧正月)には、バンコクでも39℃となったほか、北部チェンマイで40.3℃、メーホンソンで42℃、世界遺産の町スコータイでは44.1℃というタイ観測史上2位となる気温が記録された。
猛暑による深刻な水不足のため、地方では渇水と干ばつ被害が広がり、伝統行事である水かけ祭りも今年は規模を縮小して行われた。
猛暑でエアコンの使用が増えたことにより、4月19日にはタイで最大電力の過去最高を更新している。

参考記事:タイで最大電力過去最高、猛暑でエアコン使用 | newsclip 2016年4月20日

10. タイ国鉄の寝台列車に新型車両が導入

special express

Photo:タイ国鉄Facebookページ

11月、タイ国鉄は、特急(寝台)列車に新型車両を導入し、4路線の運行を開始した。新型車両は中国製で、車内にはフリーWi-Fiや監視カメラなどを備えられている。

各路線と時刻表は以下のとおり。

  • バンコク⇔チェンマイ
    バンコク発18:10 チェンマイ着07:15
    チェンマイ発18:00 バンコク着06:50
  • バンコク⇔ウボンラーチャターニー
    バンコク発20:30 ウボンラーチャターニー着06:35
    ウボンラーチャターニー発19:00 バンコク着05:15
  • バンコク⇔ノーンカーイ
    バンコク発20:00 ノーンカーイ着06:45
    ノーンカーイ発19:10 バンコク着06:00
  • バンコク⇔ハジャイ
    バンコク発14:45 ハジャイ着06:35
    ハジャイ発18:45 バンコク着10:30

参考記事:タイ国鉄新型車両導入 バンコク~チェンマイ線など | タイ政府観光庁 2016月12月6日

タイ国鉄の寝台列車は、新車両以前にはJR西日本から無償譲渡されたブルートレインを使用していた。鉄道ファンのみならず、日本人にとっては旅愁を存分にかきたてるものであった。

ブルートレインに乗れなくなってしまうのは残念ではあるが、新型車両で快適な鉄道の旅も早く味わってみたい。

参考:タイ国鉄公式HP

以上、YINDEEDが独断で選ぶ2016年タイの10大ニュースをお届けした。

タイは毎年のように大きな事件や災害、政変が発生しているが、今年はプミポン前国王が崩御し、新たにラマ10世の時代が始まるというタイにとって大きな転換の年となった。後から振り返っても、この一年、そしてあの日を忘れることはないだろう。

2017年のタイは、どんなことが起きるのだろうか。

在住日本人としての自分の役割を果たし、タイと日本人社会に貢献できるよう活動をしていきたい。