あなたが旅情を掻き立てられる瞬間とはどんな時、場所だろうか? 
空港、駅、車窓、寝台列車、夜行バス、フェリー等…
僕の実家がある千葉県佐倉市や少年時代を過ごした群馬県高崎市では、上り電車の終点はいずれも上野駅だった。
東京へ行く=上野だった少年時代の影響か、僕は東京駅よりも上野駅に旅情を感じる。
上野駅は、上京する者、帰省する者、季節労働者、外国人旅行者など、ひとりひとりの人間模様を垣間見ることができ、僕の中では東京で最も旅情を掻き立てられる場所のひとつだ。

さて、我々の住むバンコクではどうだろうか?
世界有数の観光都市であるこの街で、外国人である我々日本人にとっては、街のいたるところで旅情を掻き立てられる瞬間がある。
普段の行動範囲やパターンをほんの少し変えるだけで、一気に非日常の空間を体験できるのがバンコクの魅力だと僕は思う。
だが、バンコクでの暮らしが長くなるにつれて、そうした非日常の瞬間も日常へと変わる。見慣れた景色が増え、日常で旅情をそそられることも段々と少なくなってくる。

僕は旅が好きだ。連休には必ずといっていいほど、旅に出る。
「アイデアは移動距離に比例する」とは、高城剛氏の名言だが、実際このYindeedマガジンの記事の企画や新しい事業のアイデアなどは、旅をしているときに浮かぶことが多い。
非日常の空間に身を置くことで、普段とは違う思考回路のスイッチが入り、これまで点と点だったことが線で繋がり、目の前がパッと開ける瞬間が多々ある。
だが、仕事が多忙でまったく旅に出れない時ももちろんある。そんなときは、せめてバンコクで旅情を掻き立てられる場所に身を置き、ゆっくりと読書でもしたいものである。
バンコクで旅情を掻き立てられるところといえば、チャオプラヤー川、カオサン、中華街、運河ボート、お寺、市場などが挙げられるだろう。
前述した通り、僕が東京で最も旅情を感じるのは上野駅である。
そしてバンコクの上野駅とも言える存在が、国鉄フアランポーン駅(バンコク中央駅)だ。

この記事の目次


バンコクの上野駅 国鉄フアランポーン駅

Hua Lamphong国鉄フアランポーン駅

タイ国内は長距離バス路線が発達し、どこへでもバスで行くことができる。また近年、急増するLCC(格安航空会社)により、鉄道よりもLCCの方が安いくて早いという状況になってきている。以前に比べ、鉄道を利用する機会は激減している。
それでもフアランポーン駅では、地方から上京した者や帰省する者、寝台列車でマレー半島縦断の旅に出るバックパッカーなど、様々な人間模様を垣間見ることができ、僕の中ではバンコクで最も旅情をそそられる場所のひとつなのである。

Hua lamphong国鉄フアランポーン駅構内

Hua lamphong列車を待つ人々

Hua lamphongバックパッカー

そう、僕がバンコクで最も旅情を掻き立てられるカフェというのは、この国鉄フアランポーン駅構内にあるのだ。

バンコクで最も旅情を掻き立てられるカフェはここだ!

Hua lamphong

国鉄フアランポーン駅構内。待合用の椅子を見下ろすように中二階にはテラスがある。

Hua lamphong

そのテラスの一番階段寄りにカフェがある。
そう、このブラックキャニオンコーヒー(タイローカルの大手コーヒーチェーン)こそがバンコクで最も旅情をそそられるカフェなのである。

Hua lamphongカフェの様子

Hua lamphong座席からは構内を一望できる

発車時刻を告げるアナウンスが旅情をかき立てる。

ここで、まったりと旅行記でも読んでいるとバックパッカー時代を思い出し、旅情にひたれるのだ。
せっかくなので、おすすめの旅行記を2つ挙げておこう。

フアランポーン駅構内のカフェで読みたい旅行記2選!

1つ目は、旅人の永遠のバイブル・沢木耕太郎著「深夜特急」
特にここで読むなら、バンコクからシンガポールまでマレー半島を縦断する「第2巻マレー半島、シンガポール編」だろう。

そして2つ目は、Kindle限定のクロサワコウタロウ著「珍夜特急」だ。
「珍夜特急? なにそれ、深夜特急のパクリでしょ」という印象を持つ方がほとんどだと思うが、旅行記としての完成度は高く、あっという間に読破してしまった。Kindleが生んだ旅行記の名作といえるだろう。

こんなストーリーだ。

インドのカルカッタからポルトガルのロカ岬まで、ユーラシア大陸を単独バイクで横断する――。19歳の”私”は、大学の学費を費やして行ったタイ旅行でどこからともなくそんな啓示を受ける。
すぐに卒業を諦め、3年間に及ぶ準備期間を経ていよいよインドに入国した”私”は、いきなり送ったバイクを受け取れないというハプニングに見舞われる。
こんな調子で、それまで日本ですらまともなツーリングもしたことのなかった”私”が、ポルトガルまで無事に走り続けることができるのだろうか――。期間約1年、5万キロにわたるトラブルまみれの旅が、いま始まる!

1st Seasonがユーラシア大陸横断、2nd Seasonは南北アメリカ大陸縦断の旅の話である。

Kindle版のみしかないというのがもったいないくらい面白い旅行記だ。Kindleを持っていなくても、iPhoneやiPad、AndroidのKindleアプリでも読むことができる。旅行記好きの方は騙されたと思って、ぜひ一度読んでみて欲しい。

国鉄に乗ってワンデートリップ

Hua lamphong

旅行記を読んで旅情を掻き立てられたら、そのまま国鉄に乗ってふらっと途中下車の旅に出よう。サクッといける範囲でおすすめは、世界最大の仏塔がそびえ立つ町・ナコンパトム。各駅停車で1時間半ほどである。
ナコンパトムの象徴と言える、世界一の高さを誇る全高120.45メートルの黄金の仏塔、プラ・パトム・チェディ。

nakhon pathom

プラ・パトム・チェディ

インドシナ半島の中で、最初にインドからの僧によってお釈迦様の教えがもたらされた仏教伝来の町でもあり、タイ国中から参拝客が集まる仏教の聖地でもあるのだ。
ナコンパトム駅を降りると正面にプラ・パトム・チェディが見える。真っ直ぐ歩いてわずか5分ほどの距離。

Phra Pathom Chedi

夕方には境内に屋台が並び、縁日のように賑わう。仏塔を見上げ、地元の人に混じり屋台料理をつまめば、ちょっとした旅気分を味わえるはずだ。ナコンパトムは、プラ・パトム・チェディ以外にも見どころは多い。以下の『週末ナコンパトム1泊2日の旅』の連載企画をご参考にしていただけたら嬉しい。

週末ナコンパトム1泊2日の旅

「今週末、どこに行こう?」 と予定が決まっていない方、ぜひふらっと国鉄で途中下車の旅に出てみてはいかがだろうか?

それではまた明日!