2019年2月に医療目的での大麻の使用が合法化されたタイ。現在、タイ国内で医療大麻(CBDオイル含む)を処方する病院・クリニックは数十件あり、バンコクにも数件ある。
医療大麻が合法化されてから、「興味はあるもののどこで処方してもらえるかわからない」、という人や「日本でCBDオイルを使っていて、タイ赴任後も合法的にCBDオイルを手に入れたい」、という人も多いのではないだろうか。
そんなあなたのために、今後、外国人でも合法的に医療大麻が処方してもらえるバンコクの病院・クリニックを紹介していく。
ただ紹介するだけではなく、病院・クリニックの院長にインタビューを行い、医療大麻についてのアレコレを教えてもらうことにした。
「大麻って覚醒剤みたいな麻薬でしょ?合法化してもダメ絶対!」
と、拒絶反応をしてしているあなたも、
「大麻合法化、バンザイ!420!」
と、娯楽目的と勘違いしているあなたも、
「タイの医療大麻ってそもそも何?」
ということについて、みなさんと一から学んでいきましょい!という企画である。
外国人でも処方OKの医療大麻クリニック「サワディークリニック」
サワディークリニック
記念すべき第1回目に登場するのは、「サワディークリニック(Sawasdee Clinic)」。言うまでもなくサワディーカップのサワディーである。
日本語で言えば「こんにちはクリニック」。
爽やか過ぎることこの上ない名前だが、バンコクで最も有名な医療大麻クリニックと言って差し支えないだろう。
HPでも医療大麻を全面的にプッシュ
サワディークリニックがあるのはパホンヨーティン通りのソイ63。
多くの日本人にとって馴染みのない場所だと思うが、ドンムアン空港の目と鼻の先であり、12月16日に開通するBTSスクンビット線の新駅「パホンヨーティン59駅」からわずか800m、徒歩10分とアクセスは決して悪くない。
「本当にこんなところにクリニックがあるのか?」
と、不安になるほどソイの奥へと進んだところにクリニックはある。
ところどころにソイドッグという名の野犬がいるのでそれだけはご注意を。
できれば駅からタクシーなりGrabなりを使ったほうがいいだろう。野犬に噛まれても、残念ながら大麻では治療できないのだ。
医療大麻をGETするまでの道は平坦ではない。
今回、サワディークリニックのジンタナー院長にインタビューをご快諾いただいた。
サワディークリニック・ジンタナー院長
ジンタナー院長(Dr.Jintana Manorompatrasal)は、医療大麻治療において全国的に有名なドクターである。
プーミポン病院とチュラポーン病院および癌研究センターで30年以上リハビリテーション医学を実践。理学療法や癌のリハビリテーションを専門としている。
↑は11月11日〜13日にオンライン上で開催された「The Cannabis Investment Summit World (CISW) 2020」で講演するジンタナー院長の動画。
ここからは硬いかつ長い話(1万字!)になるが、タイの医療大麻に興味がある人は、ぜひ我慢して最後まで読み進めてほしい。
どうしても我慢できないというあなたのために、最初に要点をまとめておこう。
- サワディークリニックは2年間で述べ7,500人の患者に医療大麻を処方
- 日本人の患者もいる
- 7,500人のうち半数がガン患者でそのほとんどがステージ3か4
- タイ伝統医療では古くから大麻を使ってきた
- 医療だけでなく食用にも大麻を使ってきた(大麻入りのトムヤムクン「トムヤムクン・サイ・ガンチャー」など)
- てんかん、パーキンソン病に効果がある
- ガン患者も医療大麻を使うことで良い効果が得られる
誰にでも医療大麻の門戸は開かれている。
「大麻=麻薬=ダメ絶対」
という固定観念は捨てて、話しを読み進めていただきたい。
それではまず、「サワディークリニックとはどんなクリニックなのか?」ということから聞いていこう。
Q:サワディークリニックはどんな特徴があるクリニックなのでしょうか?
医療大麻のライセンス
ジンタナー院長:医療大麻を使った治療を行うメディカルクリニックです。タイ保健省から認可を取得して運営しています。
クリニックを開院したのは1994年になりますが、その頃は医療大麻ではなく、一般的な西洋医学の治療を行っていました。医療大麻を使った治療を行うようになったのは、医療大麻の使用が合法化されたここ2年ほどになります。
リゾートホテルのような院内
Q:医療大麻の専門医は何名いるのでしょうか?
サワディークリニックの医師とスタッフのみなさん
ジンタナー院長:当クリニックには交代制で5人の医師がいます。この5人は皆、政府が定めた研修を受け、医療大麻の資格を持った医師です。
Q:ジンタナー院長の経歴を教えてください
ジンタナー院長:このクリニックを立ち上げる前は、国立病院で主にガンの治療を行ってきました。
末期ガンなど重度のガン患者の方々が、精神的な幸福を感じられるようなサポートをしたい、という思いでガンの治療にあたってきました。
どんな治療を施そうとも、つらそうにしている患者さんの姿を見ていると、彼らの苦しみを和らげるために他に選択肢はないのか、と考えるようになったんです。
もし最期を迎えることになったとしても、幸せな気持ちでこの世を去ってもらう方法はないかと。
Q:それで医療大麻に目を向けたと?
ジンタナー院長:はい、ちょうどタイ政府も医療大麻の合法化に向けて舵を切ったタイミングでした。可能性を探るため保健省主催の医療大麻の研修を受講することにしたんです。
研修を受ける中、大麻の効能には本当に驚かされっぱなしでした。
Q:サワディークリニックで医療大麻の治療を受ける患者はどれくらいいるのでしょうか?
ジンタナー院長:医療大麻による治療をはじめて2年ほど経ちましたが、これまでに述べ7,500人の患者に医療大麻を処方してきました。そのうち98%がタイ人、外国人は2%程度です。
Q:外国人でも医療大麻の処方が受けられるんですね?
ジンタナー院長:外国人でも病気や症状があれば、クリニックに来院し、登録することで問題なく処方できます。
医療大麻を処方するかどうかは、大麻の専門医が診察の上、判断しています。
Q:日本人の患者もいるのでしょうか?
ジンタナー院長:はい。多くはありませんが、日本人も治療にいらっしゃいますよ。
Q:サワディークリニックの患者で一番多い病気はなんですか?
ジンタナー院長:圧倒的にガンです。当クリニックの患者の50%がガン患者で、そのほとんどがステージ3、4です。このステージになると、ガンを治すことよりも、目的は“生活の質を向上させる”ことになります。
医療大麻を使用することで、痛みの緩和や食欲の増進、消化機能の改善といった効果が期待できるのです。
抗がん剤治療の副作用を和らげることに関しても、大麻はかなり効果があります。
医療大麻治療で腫瘍が小さくなるケースも確認されていますが、医療大麻のみでガン治療を行うのではなく、手術や抗がん剤といった現代医療と同時並行で治療を続けることで、相乗効果が期待できるのです。
ーーガン患者に対する医療大麻治療に関しては、サワディークリニックはタイでもずば抜けた実績を持っている。それではガン以外だと、どんな病気・症状が多いのだろうか?
Q:ガン以外だとどんな病気・症状の患者が多いですか?
ジンタナー院長:ガン以外だとアルツハイマーやパーキンソン病、脳性麻痺、子供の自閉症やADHDなどの患者も多いです。
あとは精神的なもの、例えば不眠やうつ、情緒不安定、イライラなどですね。こういった症状にも医療大麻はよく効きます。
サワディークリニックで処方された医療大麻(左からTHCオイル、CBDオイル、THC&CBDアロマ)
ーー確かに僕も眠りが浅いという症状で医療大麻を処方してもらっているが、とても効果を感じている。
ひどいときは1時間おきに目が覚めていたのが、医療大麻(CBDとTHCのミックス)を摂取してから寝ると、毎回ではないが、朝まで一度も目が覚めない日もある。
僕の友人は、鬱まではいかないが、頻繁に気分がひどく落ち込むといい、当クリニックを受診。大麻成分(THC)入りのアロマを処方され、気分の落ち込みが酷いときにそのアロマを摂取すると、すぐに明るい気分になり、ネガティブ思考から解放されるという。
もし僕のように眠りが浅かったり、不眠症の方でアルコールや睡眠導入剤に頼ってしまっている人がいたら、医療大麻を試してみる価値はあると思う。
怒りっぽい人や不安、ネガティブ思考に悩んでいる人もそうだ。僕の周りでは実際にそのような症状に医療大麻が効果を発揮している。
医療大麻で陶酔したり、中毒になったりしないのか?
ーー医療大麻とは言っても大麻であることには変わりないわけで、陶酔したり、中毒になったりするのでは?
と、不安に思う人もいるかもしれない。
実際、僕も使い始めのときは同じように不安だった。
結果、1年近く使ってきて、一度も陶酔したことはない。もちろん中毒にもなっていない。
よく考えてみればわかることだ。
毎回陶酔していたら、とてもじゃないが治療には使えない。仕事中にも使えないことになる。
どの程度の用量で酩酊するかについては、アルコールと同じように個人差があるという。
Q:医療大麻では陶酔することはないのでしょうか?
ジンタナー院長:どの程度の用量で効果があるか、また陶酔などの副作用があるかは個人差があります。ですので、使い始めるときは少量から初めて、体を徐々に慣らしていく必要があるのです。
効果が得られると思われる最低限の量からスタートしていきます。効果が得られなければ少しずつ量を増やしていき、副作用がでない分量を使いながら確かめていくのです。
ーーなるほど用量は慎重に見極めていくということである。僕が陶酔したことがないのも、副作用がでない分量だけ摂取しているからなのだ。
たくさん摂取してもまったく陶酔しない人もいれば、ほんの少し摂取しただけで気分がパッと明るくなる、という僕の友人のようなケースも有る。
医師の指導に従い、定められた用法用量を守って使用する分には陶酔したり、中毒になる心配はないのではないか、というのが1年間医療大麻を使ってきた僕の実感だ。
それにしてもタイはなぜ、アジア諸国の中で医療大麻の合法化がどこよりも早く進んだのだろうか。
チッタナー院長に聞くと、それにはタイの歴史が深く関わっているという。
タイにおける医療大麻の歴史
Q:タイではなぜ、アジア諸国の中でいち早く医療大麻の合法化が進んだのでしょうか?
ジンタナー院長:歴史的に見ると大麻はハーブとして4000〜5000年前から世界中で使われてきました。
中国では4500年ほど前から痛みの緩和、マラリアの治療、手術の麻酔代わりに使われたこともあったようです。
エジプトでも4000年ほど前から大麻が様々な治療に使われ、それは壁画にも残されています。イギリスではヴィクトリア女王が生理痛を緩和するために大麻を使ったという記録もあります。
もちろんタイでも大麻は使われてきました。アユタヤ時代から大麻を使っていた記録が残っています。
「オーソップラーナラーイ(ナライ王に捧げるためのお薬)」という王様に処方するために様々なハーブを混ぜ合わせた薬があるのですが、大麻はその中のひとつに加えられていました。
ワット・ポーの壁画にも大麻が描かれている
ジンタナー院長:現ラッタナーコーシン王朝でもその薬のレシピは受け継がれており、ワット・ポーの壁画にも大麻を使った薬が描かれています。
大麻を使った薬はいくつもありますが、一番有名なのがナムマン・サナン・トライポップです。
これは大麻をすりつぶした汁をごま油と混ぜ、胡椒、赤たまねぎ、クラチャーイ(生姜の一種)、プラオ、ルークチャン、ドークチャンなどを加えて、さらにすりつぶして作ったものです。
解毒作用やお腹の中にたまったガスを排出するといった効果があります。
タイに伝わる大麻を使った薬のレシピ(写真は以前取材したランシット大学のもの)
ジンタナー院長:タイでは大麻は単独で使うものではなく、色々なハーブと混ぜて使われてきたのです。
そのレシピは90種類以上になると言われているんですよ。
現在では保健省がその中から作りやすく、効果が得られやすいとされている16のレシピを公表しています。
Q:その薬は誰でも作ることができるのですか?
ジンタナー院長:病院だけでなく、歯科医院や動物病院などでも使用が認められています。
もちろん大麻が含まれた薬を処方するには、政府が定めた研修を受講し、試験に合格しなければなりません。
そのような段階を経て、医療大麻を治療の中に使うことができるのです。
大麻入りのトムヤムクンとグリーンカレー?!
ーータイでは伝統的に大麻を使ってきた歴史があるため、医療大麻を受け入れる下地があったということですね。
日本では、大麻=麻薬という意識を持っている人が多く、医療大麻の合法化はまだまだ時間がかかりそうです。その点についてはどう感じますか?
ジンタナー院長:日本でも大麻は違法なのでそれは仕方ないと思います。人々の価値観が変わるには数十年という時間がかかるのではないでしょうか。
あとは身近に大麻があったかどうかということも大きいと思います。タイでは庭に出れば大麻が生えているところもありました。大麻が生活に溶け込んでいたのです。
大麻という植物をよく目にしていたこと、大麻を使った薬のレシピが記録に残っていること、大麻を薬としてだけでなく料理にも入れていたこと、そういった歴史的背景が医療大麻の合法化にいち早く舵を切れた大きな理由でしょう。
料理についていえば、たとえばトムヤムクンに大麻を入れたトムヤムクン・サイ・ガンチャー、グリーンカレーに大麻を入れたゲンキオワーン・サイ・ガンチャーというように、タイ料理のハーブの一つとしても大麻は使われていたのです。
タイ料理の代名詞トムヤムクン
ーー代表的なタイ料理であるトムヤムクンやグリーンカレーにも大麻を入れていたとは…(笑)
それほどタイでは大麻が生活に溶け込んでいたのだ。
そうした背景があれば、医療目的の大麻使用にも抵抗がないのにも頷ける。
タイで処方される医療大麻の種類
ーー医療大麻と一口にいっても様々な医薬品があるが、タイでは大麻に含まれる化学物質(カンナビノイド)の一種であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)を含んだ製品が医療大麻として扱われている。
欧米では大麻のバッズ(花穂)を医療大麻としてそのまま処方する国もあるようだが、現状タイではバッズが処方されることはない。THCやCBDが含まれたオイルや錠剤などが医療大麻として処方されることになる。
THCは向精神作用がある成分であり、大麻を摂取して陶酔するのはこのTHCの薬理作用によるもの。
CBDには向精神作用がなく、日本では健康食品として扱われているほど有害性が低い成分である。
楽天市場ではたくさんのCBDオイルが販売されている
ここ1〜2年、日本でもCBDを含んだオイルや食品がブームになっているが、CBDに関しての規制は日本はタイよりも緩い。アマゾンや楽天などのECサイトで簡単に手に入れることができるのだ。
CBDだけみれば、日本はタイよりもはるかに普及しているといってもいいだろう。
タイではCBDも厳しく規制されており、日本のように手軽には入手できない。医療大麻のライセンスを持った病院やクリニックで処方してもらうしかないのだ。
サワディークリニックでは、THCとCBDが含まれた医療大麻をどのように使い分けているのだろうか?
Q:医療大麻製品の使い分けどうしているのですか?
ジンタナー院長:医療大麻をどのような症状の患者に処方できるのか、ということもある程度決められています。
多発性硬化症から来る痛みや震え、ガンの痛みの緩和、吐き気などには、先述の16種類のレシピから作られた伝統薬を使うこともありますし、効果が認められている外国製の医療大麻製品を使うこともあります。
てんかんには、英国のGWファーマシューティカル社製の医療大麻製品「エピディオレックス(CBDオイル)」が非常に効果があり、世界中で使われています。
同じくGWファーマシューティカル社製の医療大麻製品で有名なものに、「Sativex(サティベックス)」がありますが、これは大麻成分であるTHCとCBDを1:1の割合で配合したもので、、多発性硬化症患者の神経因性疼痛、痙縮、過活動膀胱といった症状の緩和に効果が期待できます。
先行する欧米の医療大麻医薬品の効果などを鑑み、タイ保健省は医療大麻を3つに分類しました。THC、CBD、THCとCBDを1:1で混ぜたものの3種類です。
Q:その3種類はどこが作っているんですか?
GPO製の医療大麻オイル
ジンタナー院長:タイ政府によるGPO(The Government Pharmaceutical Organization)が作っています。
医療大麻ライセンスを持つ病院やクリニックだけが、GPOから医療大麻製品を仕入れることができ、患者に処方することができる仕組みです。
医療大麻のパーキンソン病への驚くべき効果
Q:てんかんだけでなくパーキンソン病にも医療大麻が効果があると聞きましたが、それは本当でしょうか?
ジンタナー院長:タイでは昔からルークノックという震えや目の黄ばんだりする症状の病気がありました。これは現在のパーキンソンの症状に似ているのですが、医療大麻を処方したところかなり良い効果が出ています。
医療大麻を服用後、震えが即座に止まるなど、効果がすぐに分かるのです。
硬直したり、痺れたりして、普通の動きができない患者の症状が改善するだけでなく、よく眠れるようになったり、幸せな気分になったり、考えすぎてイライラすることも減ったり、食欲も旺盛になったりと、驚くほどたくさんの改善が見られました。
ジンタナー院長:この動画を見てください。来院当初歩くこともできなかったパーキンソン病患者に医療大麻による治療を続けたところ、歩けるようになり、今では普通に仕事もできるまでに回復したのです。
ーーー不治の病と言われるパーキンソン病にこれほどまでに効果があるとは。これは驚きました。
ジンタナー院長:患者自身の生活の質も上がり、自分の世話を自分でできるようになり、この患者さんと同じように病気が発症する前の生活と近いレベルの生活ができるようになった人も少なくありません。
パーキンソン病患者は歩くのが困難なので、家に引きこもりになる人が多いのです。
ちゃんと動けないことで事故に遭遇してしまったり、顔の筋肉が硬直することで、顔に表情がなく、喋るのも困難だったりします。そのせいで外出が恥ずかしくなる人も少なくありません。
社会に飛び込むことを躊躇する人や、自分の気持ちを上手く伝えられないことで悩んだり、イライラしたりしてしまう人も多く、精神的につらい立場に追い込まれるケースがとても多いのです。
医療大麻を使用することでパーキンソン病患者が得られる効能には次のものがあります。
1. 食欲増進
2. 動きやすくなる
3. 硬直の症状や震えが減る
4. 気分が良くなる
5. 社会活動に参加できるようになり、人生が楽しめるようになる
これらの効果が得られることで、家庭の中の経済状況も改善されます。なぜならば患者さんを常に看病しなければならない状況が解消されるからです。
パーキンソン病患者が医療大麻を継続して服用することで、半年後には40〜50%程度の回復が見込めます。
完治することは難しいですが、それだけ回復すれば患者さんは社会復帰でき、仕事もできるようになり、よい人生を送ることができるようになるのです。
ガンに対する大麻の効果
Q:ガン患者にも医療大麻は効果があるのでしょうか?
ジンタナー院長:ガンで体の様々な機能が正常に動かなくなってしまった人にも大麻を使用することで良い効果が得られます。
ガン患者の中には食欲がなく痩せてしまったり、痛みが激しかったりする人が多いですが、大麻を使うことでよく眠れるようになったり、食欲が旺盛になったり、痛みや炎症が抑えられ、筋肉も正常に動くようにもなります。
大麻はガンの様々な症状にとても効果的だと言えるでしょう。
世界中の研究所でがん細胞に大麻成分を注入することで症状が改善することが証明されています。インターネットでも資料を見つけられますので、「Cannabinoid and cancer」で検索してみてください。
世界中で行われる研究の中で、大麻成分はがん細胞に対して4つの効果があると見られています。
1. 大きくなるのを止める
2. 拡散を止める
3. アポトーシスとオートファジーを止める
4. 血管に塊ができて血液の流れをブロックするのを止める
タイ国内でも研究が進められています。ランシット大学の研究室では肺ガンの細胞が小さくなることが明らかになり、コンケーン大学の研究室では腎臓ガンの細胞が小さくなることが明らかになっています。
ーー世界各国で研究が進められていく中で、今後、様々病気や症状に効果があることが明らかになってくるだろう。
まるで魔法のような薬に思えてしまうが、すべての物事には功罪があるのは世の常。大麻が逆効果になる病気や症状はないのだろうか。
違法店での医療大麻の購入リスクは逮捕だけでない
Q:大麻を使わないほうがいい病気や症状はありますか?
ジンタナー院長:まず、大麻が体質に合うかどうかを確認するため、使用する前に必ず検査を行います。アルコールと同じで体質的に受け付けない人もいるためです。
もうひとつ気をつけなければならないのは、家族や親戚に統合失調症の患者がいる人です。
大麻を使うことで、隠れていた統合失調症の症状が現れてしまうことがあるからです。
医療大麻を処方するかどうかは、タイ保健省が指導するとおりWHOが定めた基準に則って、医師が判断しています。
先ほど申し上げたとおり、どれくらいの量を服用すると陶酔などの副作用が出るか、というのは人それぞれです。医療大麻を使った治療を始めたい方は、必ず専門医による診察を受けるようにしてください。
ーーバンコクではライセンスを持った病院・クリニック以外でもTHCやCBDが含まれた製品を販売する違法店がリアルにもネットにもある。
そのような違法店で購入すれば逮捕されるリスクがあるだけでない。もっと恐ろしいのはそれらの製品に何が含まれているかわからないことだ。
医療大麻のライセンスを持った病院・クリニックで処方される製品であれば出どころもはっきりしているし、安全性も認められたものである。だが、違法店で購入するものは誰がどうやって作ったのか不明なものも多い。
日本では一時期、脱法ドラッグというものが社会問題になったが、それと似たようなものだと考えていい。
タイで医療大麻を使用したい人は必ずライセンスを持つ医療機関を受診するようにしてほしい。
タイにおける医療大麻の未来
Q:最後に、ジンタナー院長は医療大麻の将来についてどんな希望を持っていますか?
ジンタナー院長:今は変革の時期。まだ医療大麻を使い始めたばかりのタイミングです。
たくさんの効能があり、様々な病気や症状に効果があると期待されていますが、大麻のすべてが素晴らしい、と諸手を挙げて称賛するものではありません。
いいところはたくさんありますが、気をつけなければならないこともそれなりに多いということです。
それでも政府含め関係者は皆、大麻は大きなチャンスと捉えています。
効果・効能、安全性に関して研究を進めていけば、かなりの経済効果が期待できるものなのです。
昨年取材で訪れたランシット大学「Medicinal Cannabis Research Institute」
今タイの医療大麻製品は主にオイルが作られていますが、より使いやすいものを商品開発していく、たとえば舌下や肌に貼れるシートにしたり、ガムにしたり、きれいな錠剤にしたり、香りのいいクリームに加工したり。
政府、医療関係者、研究者、農家、みなが心を開いて研究を進めていけば、育てやすく効能を得やすい新種の大麻を作り出すこともできるかもしれません。
ランシット大学「Medicinal Cannabis Research Institute」が開発したスプレー型の医療大麻
ランシット大学「Medicinal Cannabis Research Institute」が開発した錠剤型の医療大麻
将来的には治療だけでなく、健康維持を目的にした使い方や製品も作り出せるかもしれませんね。
医療大麻を使った治療にご興味がある方は、ぜひ一度ご来院ください。
ーー以上、サワディークリニック・ジンタナー院長へのインタビューをお届けした。
日本では当分、医療大麻の合法化は難しいと思うが、タイでは誰でも治療を受けることができる。まだ医療大麻という選択肢を知らない人が多いと思うが、数年もすればタイでは当たり前になっていくのではないかと思う。
タイ政府はアジア・中東圏からの医療ツーリズムの一環として、医療大麻市場の創出に注力している。市場の牽引役として存在感を高めていくだろう。
コロナ後には日本からの医療大麻ツーリズムも活発になることが予想される。来たるべきその時に備え、今後、タイの医療大麻情報を積極的に発信していくつもりだ。
次回の取材はすでに完了。近日公開するので、お楽しみに!
サワディークリニック店舗情報
- 住所:47 ซอย พหลโยธิน 63 แขวง อนุสาวรีย์ เขตบางเขน กรุงเทพมหานคร 10220
- 営業時間:8時〜17時半 無休
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- Mobile:093-438-1515
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