タイの医療大麻について理解を深めていきましょい!という意気込みでスタートしたシリーズ「#タイの医療大麻」。

第一弾でお届けしたバンコクの医療大麻クリニック「サワディークリニック」の記事は大きな反響をいただいた。

「早速、医療大麻の治療を受けに行ってきました!」と数人の方からメッセージをいただき、バンコク在住日本人の中にも医療大麻に興味を持つ人が一定数いるのだということを再確認できた。

サワディークリニックは、ガン患者への医療大麻治療を中心に豊富な実績があるが、日本語には対応していない。問い合わせや診察はすべてタイ語か英語になる。

「不完全な言語で治療を受けるのは少し不安。初めて受ける医療大麻治療は、できれば日本語がいいんだけどなぁ…」

と、一歩を踏み出せない方も少なくないはず。

今回はそんなあなたにぴったりの“日本語で医療大麻治療が受けられる病院”、「セレン病院」を紹介したい。

この記事の目次


日本語で医療大麻治療が受けられるセレン病院とは?

Salen hospital

セレン病院外観

セレン(Serene)病院は、スクンビット地区とスワンナプーム空港の中間地点に当たるフアマーク地区にあり、どちらからも車で20分弱。最寄り駅であるエアポートレイルリンクのフアマーク駅からは1.5kmほどの住宅街の中にある。

僕は駅から徒歩で向かったが、途中、野犬に追いかけられたので、よほどの犬好きでない限り車で向かうほうが懸命だ。

今回、セレン病院の院長を務めるレヌー・ウボン医師にインタビューを行った。

Salen hospital

レヌー・ウボン医学博士(京都大学医学部首席卒業)

セレン病院及びバンコク病院日本人クリニック医長・副医局町長

1954年チョンブリ県シラチャー生まれ。医学の名門マヒドン大学に入学。日本の文部省による奨学金を得て京都大学医学部に留学し首席で卒業。京大付属病院での研修をえてタイに帰国。

バンコクの最大級の私立病院などで長年勤務し、これまで診察した日本人はのべ17万人を超える。高齢者医療にも精通し、高齢者介護施設も自身で運営する経験から”生活の質の改善”にも早くから着目。

標準治療だけでなく、医療大麻による緩和ケアや代替治療も提供するため2020年に医療大麻専門医(ディスペンサー)の資格を習得し、患者さん一人ひとりにあった医療大麻治療を提供している。

日本で学び、タイでも日本人向けに治療を行ってきたレヌー医師。もちろん日本語も達者である。

そんなレヌー医師がセレン病院内に医療大麻クリニックを立ち上げたのは今年4月。

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セレン病院内にある医療大麻クリニック 

コロナ禍での創業となり、予定していた日本からの医療ツーリズムの受け入れが行えない中、「日本語で医療大麻の病院が受けられる病院がある」という口コミが少しずつ広がり、タイ在住日本人の患者が増えてきているという。

それではレヌー医師へのインタビューをどうぞ!

レヌー院長へのインタビュー

Q:セレン病院はどんな特徴のある病院なのでしょうか?

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セレン病院のリハビリルーム

レヌー医師:当院は大きくリハビリテーション(以下、リハビリ)と医療大麻治療の2つの治療を行っています。リハビリでいえば、脳梗塞や神経痛、寝たきりの患者が多いですね。

今年4月には医療大麻クリニックを立ち上げましたので、リハビリ患者にも大麻治療を取り入れるようになりました。

−−なるほど、サワディークリニックはガン患者が多かったが、セレン病院はもともとリハビリがメインの病院なので、リハビリ患者が多いのが特徴なのである。

Q:セレン病院に大麻の専門医は何名いるのでしょうか?

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医療大麻ライセンス

レヌー医師:今のところは私ひとりです。医療大麻自体はまだ解禁になったばかりの分野ですので、専門医自体が少ないのです。今後、需要が増えていけば専門医も増やしていきます。

研修で目にした大麻の驚くべき効果

 

Q:リハビリ以外に医療大麻治療を始めようと思ったきっかけはなんですか?

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レヌー医師:初めてタイ保健省主催の医療大麻についての研修を受けたとき、大麻の効果に驚かされました。

その研修では、パーキンソン病患者に大麻のリキッドを舌下投与するビデオを見たのですが、ものの数分で震えが止まったのです。

大麻は驚くべき即効性があり、これほど効果が期待できるなら、西洋医学の治療が効かない病気や症状に使ってみたい。そう思ったのがきっかけです。

(研修の動画ではないが、パーキンソン病患者に大麻オイルを投与する動画)

レヌー医師:実際に私の患者に使ってみたところ、これまでどうしても歩けなかったのに、すぐに歩けるようになりました。ビデオで見たのは本当でした。その経験もあり、本格的に医療大麻治療に取り組み始めたのです。 

−−やはりパーキンソン病にはかなりの効果があるようだ。不治の病と言われてきたパーキンソン病。大麻で完治するわけではないようだが、かなりの回復が見込めるのは間違いなさそうだ。

伝統医療と現代医療における大麻の扱い方の違い

Q:セレン病院ではどんな医療大麻を使っているのですか?

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レヌー医師:まずタイの医療大麻についてご理解いただきたいポイントのひとつとして、タイ伝統医療を行う医療機関と我々のような現代医療を行う医療機関では、処方できる大麻に大きな違いがあるということです。

伝統医療では、十数種類ある薬草の中のひとつとして、大麻を混合することが認められていますが、大麻(成分)のみを処方することは認められていません。

現代医療を行う医療機関では、大麻(成分)のみを処方することが認められています。

これが大きな違いです。

我々は大麻(成分)のみを処方できるライセンスがあるため、より効果が得られやすくなっています。

−−ひとくちに医療大麻といっても、伝統医療と現代医療とでは扱い方に違いがあるということである。どちらを選ぶかは個人の自由だが、サワディークリニックでのインタビューにもあった“抗がん剤治療の副作用を緩和するために大麻を摂取する”というように、現代医療との組み合わせが相乗効果を生み出すのではないだろうか。

レヌー医師:大麻を使うときは、産地、品種、含有成分、投与方法、効果が出るまでの期間といった情報をすべて記録しています。

まだ始まったばかりの治療法なので、使いながら臨床データを集めている段階なのです。

将来的には、「この病気にはこの品種の大麻をこれくらいの量と期間投与すれば最も効果的」ということがはっきりと分かってくると思います。

まだわからないことが多い段階で処方が認められているということは、逆に言えば大麻はそれだけ安全性が高いといえるでしょう。

—-タイだけでなく世界中で医療大麻のビッグデータが蓄積していき、そう遠くない将来にレヌー医師がおっしゃるとおり、大麻が有効な病気・症状がより明らかになってくるだろう。

独自の医療大麻を研究開発するセレン病院

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レヌー医師:大麻草の中には様々な化学物質(カンナビノイド)が含まれていますが、医療大麻として活用されているのは主にTHC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)です。

当院では独自に大麻を研究し、オリジナルの医療大麻製品を作っています。

多くの医療大麻製品のように大麻草から抽出したTHCだけ、CBDだけを使うのではなく、CBDとTHC以外の大麻成分も含んだ製品を試作しています。

Q:CBDオイルやTHCオイルというように成分を分けるのではなく、大麻の成分が全部入っているのですね?

レヌー医師:はい、そうです。我々が試作している医療大麻製品が、欧米のそれよりも効果がある症例も出てきています。

Q:独自に大麻を購入し、製造を行っているということですね?

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大麻草

レヌー医師:はい。まず栽培についてですが、これはもちろん誰でも栽培できるわけではありません。当院ではオリジナルの医療大麻製品を作るために、政府から認可を受けた大麻農家と契約をしています。

そこから仕入れた大麻を医療大麻の製造ライセンスを持った工場と契約し、そこで大麻草からオイルを抽出します。

そうしてできたオイルを医療大麻の認可を持つ当院で処方しているのです。

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セレン病院が発行する医療大麻の処方箋

これらの商流を完全に合法的に行っているのが、当院の特徴であり、強みでもあると思います。

当たり前に聞こえるかもしれませんが、違法に行っているクリニックやお店も多いのが現状なのです。

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−−確かにネットでもリアルでもライセンスなく医療大麻を販売している店やクリニックが簡単に見つけられる。

そういったところで購入すると逮捕されるケースもあるので、読者のみなさんは絶対に利用しないでほしい。

Q:セレン病院が処方する医療大麻はオイルということですね?

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セレン病院の大麻オイル

レヌー医師:我々は大麻オイルの原液を持っています。患者の症状によって、その濃度を調整して処方しているのです。

Q:CBD、THCだけのオイルは処方していないということですね?

レヌー医師:はい、そういうことです。当院ではCBDだけ、THCだけという医療大麻製品は扱っていません。CBD、THCだけでなくほかの大麻成分も含れたものになります。

医療大麻が効果を発揮する病気としない病気

Q:医療大麻はどんな病気に最も効果があるのでしょうか?

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レヌー医師:一番期待しているのは抗がん剤治療の副作用の緩和です。大麻には、吐き気を止める、食欲増進、快眠、鎮痛、この4つの効果があります。

ガンの種類によっては大麻がガン細胞を死滅させる効果が確認されているものもありますが、まずは確実に効果のある抗がん剤治療の副作用の緩和を目的に使われていくでしょう。

Q:ほかにはどんな病気に効果がありますか?

レヌー医師:アルツハイマーの犬にも効果が確認されています。また人間ではありませんが、大量の闘魚を輸送するときに、大麻オイルを水槽に入れると闘魚が戦わずに輸送できるという話も聞いたことがあります。(笑)

−−殺し合いの喧嘩をする闘魚が戦意喪失するほどLove&Peace効果のある大麻。人間が摂取したら戦争がなくなるのでは…?そんな妄想をしてしまう。

それにしてもタイらしい大麻の活用法である。

レヌー医師:あとは、不眠症の方もよく来院されますね。

THCとCBDの特徴として、THCはパーキンソン病やアルツハイマーをはじめとした脳や神経の問題に効果があり、CBDは炎症や免疫疾患など皮膚や内蔵の病気に効果があります。

Q:てんかんや皮膚病にも効果があると聞きましたが?

レヌー医師:タイでは難治性てんかんには大麻を処方できます。難治性ではない場合は西洋医学の薬を処方しなければなりません。これは薬事法で定められています。

皮膚病で有効なのは尋常性乾癬です。大麻成分入りのクリームが効果があると報告されています。

 (難治性てんかんに大麻を投与し、数十秒で震えが止まる動画)

Q:Covid-19には効果がありますか?

レヌー医師:医療大麻業界では、Covid-19に対する効果はまだ認められていません。研究段階ですね。免疫力を強化する作用があるハーブ「ファータライジョン(センシンレン)」のほうが大麻よりも効果があるのではないでしょうか。

Q:逆に大麻を使わないほうがいい病気・症状はありますか?

レヌー医師:統合失調症の方ですね。病歴があったり、家族に統合失調症の方がいたりする場合、処方はできません。

Q:うつ病はどうでしょうか?

レヌー医師:うつ病に関しては症状によるので断定はできません。軽いうつ病の場合はまだ効果がありますが、重度になると使わないほうがいいとされています。

保健省が大麻を処方していい症状・病気をリスト化していますので、大麻の専門医はそれに則って診断をしているのが現状です。

Q:セレン病院では何人の患者が大麻治療を受けているのでしょうか?

レヌー医師:医療大麻の治療をはじめた今年4月からトータルで30名ほどの治療を行ってきました。 そのうち13名が日本人でそのほかはタイ人です。

Q:どんな症状の患者が一番多いのでしょうか?

レヌー医師:痛みですね。慢性痛や緊張性頭痛持ちの患者です。いろんな検査や治療を受けたが頭痛が治らないという患者に大麻治療を行い、完治したわけではありませんが、痛みが発生する頻度が格段に減るという事例がありました。

痛みのほかには不眠症ですね。睡眠導入剤をはじめ4種類の薬を飲んでいたが、それでも眠れないという患者に大麻を処方したところ、薬を1種類まで減らしても眠れるようになったという事例もあります。

−−僕も寝付きが悪く、眠りも浅いので医療大麻を使っているが、かなりの効果がある。アルコールや睡眠導入剤に頼ってしまっている人は医療大麻を試す価値があると思う。

Q:大麻の副作用についてはいかがですか?

レヌー医師:大麻の副作用は吐き気や頭痛だけでなく、心拍数が上がったり、倒れたり、酩酊したりする場合もあり、使用には注意が必要です。少量で副作用が出る人もいれば、たくさん使っても出ない人もいます。

大麻を使う場合には、最初にごく少量を投与し、反応を観察します。

そうしてその人にあった用量用法を見極めていくのです。

−−大麻もアルコールと同じように強い人がいれば、まったく受け付けない人もいるということ。個人の判断で使用するのはやめたほうがいいだろう。

日本人は「大麻=麻薬=悪」、というイメージを持っている人が多いのが現状だが、日本人への理解が深いレヌー医師はそのような状況に対してどうお考えなのだろうか?

医療大麻≠娯楽大麻。大麻への理解を深めてほしい

Q:日本人は大麻=麻薬のイメージが強く、医療大麻治療の一歩を踏み出しづらい人が大半ですが、そういう人に伝えたいことはありますか?

Salen hospitalレヌー医師:まずは大麻がどんなものなのか、理解していただく必要がありますよね。

“大麻=吸引”のイメージが強いのだと思うのですが、タイの医療大麻はオイルがほとんどですので、舌下や座薬のどちらかによる投与です。煙を吸引することはありません。

欧米の娯楽用大麻と違い、タイの医療大麻は酩酊しにくいというのも大きな違いです。

また、大麻はモルヒネのように呼吸抑制効果はないので死ぬこともありません。アルコールのように急性中毒になることもありません。安心して使えるものなのです。

−−レヌー医師がおっしゃるように大麻はモルヒネやアルコールのように死の危険性があるものではない。このことだけでもこの記事を読む方にご理解いただけたら幸いである。

最後に、レヌー医師にタイの医療大麻の将来について聞いた。

開かれつつあるタイの医療大麻ツーリズム市場

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Q:医療大麻はタイにとってチャンスだとお考えですか?

レヌー医師:医療とビジネス、2つの面で大きなチャンスだと考えています。医療面でいえば、西洋医学は効果があるが、副作用も大きいし、お金もかかる場合も多いですよね。一方、大麻は安価で誰にでも治療を受けられる機会を提供できます。

ビジネス面では、たとえば日本をはじめ周辺国からの医療ツーリズムだけでも大きな市場になるのではないでしょうか。「医療大麻治療を受けたい」という日本からの相談も増えています。

Q:今、外国から医療ツーリズムでタイに入国できるのでしょうか?

レヌー医師:はい、可能です。Covid-19で入国が制限されていますが、医療ビザが発行できますので、医療ツーリズム目的での入国にはまったく問題はありません。

事実、日本からの医療目的での入国を具体的に進めています。Covid-19だからといって諦める必要はありません。タイで医療大麻治療を受けたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

セレン病院に医療大麻治療で来院の方は必ず事前予約を!

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セレン病院受付

−−以上、セレン病院レヌー院長へのインタビューをお届けした。

問い合わせや診察だけでなく、医療ツーリズムでの入国手続きなど、すべて日本語で対応してもらえるのがセレン病院の特徴である。

日本語で医療大麻治療が受けられるのは、今のところタイではセレン病院が唯一。

セレン病院に医療大麻治療を目的に来院する場合、下記の予約オンライン問診を行う必要がある。

オンライン問診後、事務局から日本語のメールや電話で、①診療の予約候補日 ②疾病に対しての処方の可否(診断の結果NGの可能性も有り)の連絡があるので、必ず予約の上で来院をお願いしたいとのこと。

※飛び込みで来院してもレヌー医師が不在であったり、症状によっては処方できず無駄足になったりする可能性があるため。

医療大麻治療に興味はあるが、一歩を踏み出せないという方は、ぜひ下記までお問い合わせいただきたい。 

セレン病院 お問い合せ先