「マレー半島縦断」…なんと旅情を誘う響きだろうか。
作家・沢木耕太郎による紀行小説の名作「深夜特急」の時代から、シンガポールからマレーシア、そしてタイ・バンコクまでのマレー半島を縦断するルートは、多くの旅人を魅了してきた。
沢木耕太郎著 深夜特急第2巻「マレー半島・シンガポール編」
建国からわずか50年で驚くべき発展を遂げた近未来都市シンガポール。マレー、インド、華人が入り混じる多民族国家マレーシア。アンダマン海に浮かぶ美しい島々と遺跡、そしてアメージングな出来事が次々と起こる国タイランド。
ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ | シンガポール
ペトロナス・ツインタワー | マレーシア
リペ島 | タイ
比較的物価も安く、治安も良好(タイ深南部を除く)で、東南アジア特有のエキゾチックな雰囲気を味わえるこの3ヶ国を縦断するルートは、バックパッカーの登竜門としても知られている。
学生時代にバックパッカーでこのルートを旅したという方も多いだろう。
僕も今から15年前、ミレニアムに沸いた2000年の9月に約1ヶ月をかけてマレー半島を縦断した。当時20歳だった僕にとって、海外でのバックパッカーデビュー戦となる旅だった。
シンガポール タンジョン・パガー駅にて(2000年当時)
シンガポールから入り、マレー鉄道でクアラルンプールへ。そこからバスやフェリーを乗り継ぎバンコクまで陸路で縦断したこの旅は、僕の人生を変えたと言ったも過言ではない。
この旅を通じて僕は一気に東南アジアに魅了された。
帰国してからも僕の頭の中には東南アジアの熱気が渦巻いていた。
本屋に立ち寄っては、東南アジア関連の旅行記や雑誌を買い漁る日々が続いた。完全に東南アジアにハマった学生時代だった。
今、僕がこうしてバンコクで暮らしているのもこの時の経験があったからということは間違いない。
2度目のマレー半島縦断の旅へ
だが、この20歳の時のマレー半島縦断の旅には、心残りなことがあった。それは、「マラッカ海峡に沈む夕陽」を見ることができなかったということだ。
沢木耕太郎の深夜特急にも「マラッカ海峡に沈む夕陽はとてつもなく大きく赤い」と記されている。世界的にも有名なマラッカの夕陽を僕は見逃していたのだ。
マラッカ海峡に沈む夕陽 – 大沢たかお主演 ドラマ「深夜特急’96 熱風アジア編」より
15年前から今にいたるまで、このことは僕の心の片隅にずっと引っかかっていた。マラッカ海峡に沈む夕陽を見るまでは、僕の中であのマレー半島縦断の旅を完結することはできなかった。
バンコクに暮らすようになってからも、連休の度にタイ国内や周辺諸国へ旅をした。
マレー半島縦断の旅も計画するものの、 やはり訪れたことがない国や地域の方が旅先としては魅力的に映った。計画は実現しないまま4年が過ぎた。
だが、今年こそはと年始には決めていた。
そして遂にその機会が巡ってきた。
今年は、仏教の祝日である7月30日(木)のアサラハブーチャ(三宝節)、31日(金)のカオパンサー(入安日)が土日を絡めると4連休となる。
仕事の都合次第だが、休みが取れるかもしれない。連休が近づくにつれ、現実的に旅の計画を始めた。
どんなルートで縦断しようかと、グーグルマップでマレー半島を眺めていると、バンコクからシンガポールまで続く、「AH2」という道があることに気がついた。
左上 ソンクラーの下にAH2の記載
そう、AH2とは「アジアハイウェイ2号線」のことである。
アジアハイウェイとは?
アジアハイウェイ(Asian Highway Network)とは、アジア32ヶ国を横断する全長14万kmに渡る現代のシルクロードを目指して計画されているアジアの大動脈である。
詳しくはwikiを参照。
1号線の起点は東京日本橋。首都高を走っていると見かける日本橋の道路元標の下にあるこのAH1の看板を見たことがある方もいるのではないだろうか。
日本橋道路元標とAH1の看板
アジアハイウェイの8つの主要路線(AH1〜AH8)の中で、マレー半島を縦断しているのが、AH2(アジアハイウェイ2号線)である。
AH2は、バリ島のデンパサールからイランのコースラヴィまで東南アジア、南アジア、中東を横断する全長13,177kmの路線。バンコクからシンガポールまでのマレー半島縦断ルートはその中のほんの一部ということになる。
アジアハイウェイ2号線 AH2 は、アジアハイウェイの路線の一つである。 総延長は13,177km[1] (8,230mi) で、インドネシア・バリ州のデンパサールからシンガポール、マレーシア、タイ、ミャンマー、インド、バングラデシュ、ネパール、パキスタンを経由して、イラン・ケルマーンシャー州のコースラヴィ(英語版)に終着する。https://ja.m.wikipedia.org/wiki/アジアハイウェイ2号線
よし、決めた。
バリからイランまで続くというアジアを横断する大動脈。現代のシルクロードと呼ばれるルートの一部を南下し、東洋の真珠と呼ばれるペナン島、そしてマラッカに立ち寄り、シンガポールを目指す。
これだ。15年間宙ぶらりんになっていたマレー半島縦断の旅を完結させるにはこのルートしかない。
あとは、行けるかどうかだ。
はたして15年越しのマレー半島縦断に旅立つことが出来るのか?
次回、アジアハイウェイ2号線を南下せよ! 陸路で行くマレー半島縦断の旅 第2話〜旅立ち編〜へ続く。
それではまた明日!