バンコクのパワースポットと言えば、ラチャプラソン交差点の「エラワン・プーム(ブラフマー神)」、アマリン・プラザ前の「プラ・イン(インドラ神)」、伊勢丹前の恋愛の神様「プラ・トリムルティ」と「プラ・ピッカネー(ガネーシャ)」が日本人にもよく知られたところだろう。これらはすべてヒンドゥー教の神々を祀ったものである。

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エラワン・プームのブラフマー神

タイに住み始めた頃は、なぜ仏教国であるタイにこれほどヒンドゥー教の神々が祀られているのかと疑問に思ったものである。タイがヒンドゥー教を取り入れたのは、過去支配下に置かれていたクメール帝国の影響によるところが大きいという。クメール帝国の繁栄の象徴であるアンコール・ワットは、ヒンドゥー教と仏教が混じり合った寺院である。1431年にクメール帝国を討ち倒したアユタヤ王朝が、クメールの知識人やバラモン僧をタイに連れ帰り、絶対王政という政治体制を確固たるものにするためヒンドゥー教の思想を取り入れたと言われている。

さて、そんなタイ社会に溶け込んだヒンドゥーの神々であるが、今では冒頭でご紹介したとおりパワースポットとしても多くの信仰を集めている。

この記事の目次


パワースポットの宝庫、チャチュンサオ県

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ワット・サマンのピンクのガネーシャ

パワースポットはなにもバンコクだけではない。バンコク以外で有名なパワースポットと言えば、チャチュンサオ県の仏教寺院「Wat Saman Rattanaram(ワット・サマン・ラタナラム。以下、ワット・サマン)」にある巨大な「ピンクのガネーシャ」がその筆頭だろう。

ワット・サマンのピンクのガネーシャは、願い事を3倍の速さで叶えてくれることで知られており、ここ数年で多くの日本人観光客も訪れるようになった。読者の方でも、訪れたことがある方は多いと思う。
だが実は、チャチュンサオ県にはワット・サマンのピンクのガネーシャ以外にも巨大ガネーシャが2つもあるのはご存じだろうか。それも、2つともワット・サマンのピンクのガネーシャよりも大きいのである。この情報を知ってから、チャチュンサオの3体の巨大ガネーシャを一日で制覇する旅をしたいと考えていた。

チャチュンサオにある3つの巨大ガネーシャを制覇するパワースポット三昧の旅へ

いつ、誰と行こうかと思案していたところ、今年42歳を迎え、後厄にあたる激旨!タイ食堂の主宰者である西尾氏の顔が頭をよぎった。後厄である今年も残り3ヶ月。大過なく乗り切りきっていただくために、パワースポット巡りをするというのも悪くないアイデアである。この3体のガネーシャを制覇するパワースポット三昧の旅の道連れには最適な相棒に違いない。

ということで、先日、日帰りでチャチュンサオに3体のガネーシャを制覇する旅に行ってきた。今回は激旨!タイ食堂とのコラボ企画でお届けする。激旨!タイ食堂の記事はこちら。
チャチュンサオにある3体のガネーシャとバンパコン川沿いタイ料理店

世界最大のガネーシャ像! Wat Phrong Akat

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奇抜な形の本堂が目を引く仏教寺院ワット・プローン・アカー

9月25日(日)、正午にレンタカーでバンコクを発ち、14時に最初の目的地である仏教寺院「ワット・プローン・アカー(Wat Phrong Akat)」に到着した。途中寄り道をしていたので2時間もかかってしまったが、真っ直ぐ向かえば1時間ほどで到着できるはずだ。

まず我々の目に飛び込んで来たのは、ガネーシャではなく巨大で奇抜な形の本堂である。
これまでタイで様々な寺院に訪れてきたが、こんな形をした寺院は見たことがなかった。およそ仏教寺院とは思えないスタイルだ。この本堂はあとでじっくりと見ることとし、お目当てであるガネーシャへと向かった。
Wat Phrong Akatのガネーシャは、本堂から100mほど離れた場所にある。
これがそのガネーシャだ。

wat phrong akat高さ46mを誇る坐像で、世界最大のガネーシャ像ということである。近寄るとその巨大さに圧倒される。ユニークな顔もインパクト抜群だ。

このガネーシャは完成してからまだ1年ほどで、色彩も鮮やかである。タイ人にもあまり知られていないのか、日曜日にも関わらず観光客や参拝客も少なかった。
ガネーシャ像の足元には、ガネーシャへの願い事を伝えてくれるネズミが3体。

wat phrong akat願い事は直接ガネーシャに祈願するのではなく、このネズミの耳に囁くのがタイの巨大ガネーシャ像を参拝する際の習わしである。願い事を囁く際は、しっかりと片方の耳を塞ぎ、願い事が漏れないようにしなければならない。
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巨大ガネーシャ像を取り囲むように様々なスタイルのガネーシャ像が並んでいる。

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巨大ガネーシャ像の中にも入ることができる。

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ガネーシャ像の周囲は、のどかな田園風景が広る。

世界最大のガネーシャ像を堪能したところで、奇抜な形をした本堂に向かう。

wat phrong akat

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本堂の一階には、仏像やラーフ像、観音菩薩像などが置かれている。残念なことに、この本堂は管理状態が悪い。天井はところどころ雨漏りし、床も砂や土だらけという状態。参拝もそこそこに、階段を上り屋上へと向かう。

wat phrong akat

鏡のように反射する石が敷き詰められた床は、直射日光をたっぷりと浴び、まさに灼熱地獄。とても素足では歩ける状態ではない。一度、階下に靴を取りに戻り、改めて奇抜な形の本堂の入口へと向かった。
だが、本堂の入口の窓ガラスが割れたまま放置されており、入れる状態ではなかった。この管理状態の悪さは非常にもったいない。せっかく世界最大のガネーシャ像を目当てに参拝客や観光客が訪れても、肝心の本堂がこれでは……
ガネーシャ像に多くの参拝客が訪れ、お布施がたくさん集まったら、ぜひこの本堂の手直しをしていただきたいものである。

本堂の内部は残念ではあったが、世界最大のガネーシャ像と奇抜な外観の寺院は、一見の価値はあると言える。今後、チャチュンサオの人気観光地になる可能性も十分にあるのではないだろうか。

Wat Phrong Akat地図

Wat Phrong Akatのドローン映像

なんだかんだとWat Phrong Akatを楽しんだ我々は、2体目の巨大ガネーシャ像へと向かった。

屈強な立像の巨大ガネーシャ

Utthayan Prapikkhanes Ong Yurn Klong Khuen Chachoensao

Wat Phrong Akatから30分、2体目の巨大ガネーシャ「Utthayan Prapikkhanes Ong Yurn Klong Khuen Chachoensao(ウッタヤーン・プラピッカネー・オン・ユーン・クロン・クエン・チャチュンサオ)」に到着。

ご覧のとおりの立像で、色もピンクではなく茶褐色をしている。台座を含めた高さは39m(ガネーシャ像30m、台座9m)。Wat Phrong Akatのガネーシャよりも10m低いが、屈強で筋肉質のガネーシャは、まるで戦士のような迫力がある。
ガネーシャが必ず手にしている折れた牙も持っていない。手にしているのは、マンゴーやバナナなどの食べ物である。
実はこのガネーシャ、稲作や果樹栽培など農業が盛んなチャチュンサオの豊穣を祈願することを目的に、チャチュンサオ県が造ったものということだ。日本風に言えば「五穀豊穣の神」という存在なのである。
ガネーシャ像の設計は、タイの著名な建築デザイナーが担当したということで、細部までしっかりと作り込まれている。他のガネーシャ像にはない、しなやかさを感じる美しいフォルムである。

Utthayan Prapikkhanes Ong Yurn Klong Khuen Chachoensao

お約束のネズミもいる。

Utthayan Prapikkhanes Ong Yurn Klong Khuen Chachoensao

黄金に輝くガネーシャ立像

Utthayan Prapikkhanes Ong Yurn Klong Khuen Chachoensao

シヴァとパールヴァティー

ここは仏教寺院ではないので仏像はない。あるのは様々なスタイルのガネーシャ像と、ガネーシャの母にあたるヒンドゥー教の女神パールヴァティー像、そして父であるシヴァ神像のみ。

Utthayan Prapikkhanes Ong Yurn Klong Khuen Chachoensao持ち上げるのが困難なほどズッシリと重いブロンズ製のガネーシャ像は、7000Bで持ち帰ることが出来る。

Utthayan Prapikkhanes地図

ガネーシャ立像を取り上げたタイのTV番組の映像

ヒンドゥーの神々への参拝を済ませた我々は、いよいよ3体目の巨大ガネーシャへと向かった。

タイで最も有名なピンクのガネーシャ 

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ウッタヤーン・プラピッカネーから約15分、16時過ぎに3体目の巨大ガネーシャ像があるワット・サマンに到着した。夕方近くにも関わらず駐車スペースを見つけるのも苦労するほどの混雑ぶり。これまでの2箇所とは比べ物にならない圧倒的な集客力だ。
ワット・サマンのガネーシャ像については、もはや説明不要なほど情報が溢れているが、タイの巨大ガネーシャの代名詞的存在であり、バンコク近郊では有数の人気観光地でもある。
このピンクのガネーシャは、願い事を3倍のスピードで叶えてくれるという評判であるが、つい2か月ほど前にここを訪れた際に祈願した願いはまだ叶えられていない……

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ガネーシャの周りには例によって代理人であるネズミがいる。様々な色をしたネズミが並んでいるが、ここでは自分の生まれた曜日の色のネズミに願い事をする。
日本では馴染みがないが、タイでは生まれた曜日が重要とされており、曜日によって色が決まっている。各曜日の色は以下のとおりである。

  • 日曜日:赤
  • 月曜日:黄
  • 火曜日:ピンク
  • 水曜日:緑
  • 木曜日:オレンジ
  • 金曜日:青
  • 土曜日:紫

タイ人は、みな熱心にネズミに願い事をしている。

ガネーシャの大きさは、高さ16m、幅22mと、3体の中では最も小さい。あの2体を見てきた後だけに、より小さく感じるが、ご利益のありそうなオーラはピカ一である。

このワット・サマンは、ピンクのガネーシャ以外にも様々な神様やオブジェが、遊園地のアトラクションのごとく充実している。

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ブラフマー神

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ラーフ像

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観音菩薩

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ナーガ

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エラワン象に跨るインドラ神と愉快な仲間たち

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川に浮かぶ巨大な蓮のオブジェ

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最新のアトラクション!ゴールデンロック

訪れるたびに、新しいアトラクションが出来ている気がする。リピータを飽きさせず、お金を落としてもらうための施策を常に打ち続けるその営業努力には頭が下がる。ビジネス臭がそこはかとなく漂う寺院だが、楽しめることは間違いない。ここはまさに仏と神々のテーマパークなのである。

もちろん、テーマパークなので屋台や露店、水上レストランなど食事処も充実しており、それらを冷やかしつつブラブラと散策するのが楽しい。

ここを訪れたのは今回が3度目になるため参拝はそこそこに、目の前を流れるバンパコン川のリバークルーズを体験してみるとにした。リバークルーズは、ロングテールボートか小さな遊覧船の二種類がある。スピードの早いロングテールボートのクルーズを申し込みたかったのだが、船頭さんが不在で叶わず。今回は、遊覧船でのクルーズとなった。

wat saman

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20分40Bの船旅

ワット・サマンは、ガネーシャの大きさだけで言えば3箇所の中で最も小さいが、観光地としての総合力はズバ抜けている。タイにお寺は数万とあれど、これほどエンタメ要素の強いお寺はそうはないだろう。お子様連れなら半日くらいは時間が潰せてしまいそうである。

Wat Saman地図

ワット・サマンのドローン映像

これで無事にチャチュンサオにある3体の巨大ガネーシャを制覇することが出来た。ワット・サマンのガネーシャだけでも願い事を3倍速で叶えてくれるというのに、さらに巨大な2体ものガネーシャに願をかけたのだから、万事上手く行くに違いない。
ガネーシャ巡りの締め括りとして祝杯を上げるため、最後に我々が向かったのはバンパコン川沿いのレストランである。

川沿いレストランで川エビをたらふく食す

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ワット・サマンから約30分、市街中心部にほど近いバンパコン川沿いにあるレストラン「エカネック(ร้านอาหารเอกเขนก )」に到着した。
時刻は18時、ちょうど川の向こうのビルの間に日が落ちていくところだった。男二人で席に着くことが躊躇われるほどに、夕暮れのリバーサイドレストランにはムーディーな雰囲気が漂っていた。(笑)
だが、ガネーシャをコンプリートした我々に怖いものはない。カップルだらけの周囲に臆することなく、ベストポジションに着席した。
さて、何を食べようかとメニューを開く。チャチュンサオはこれといって名物料理はない(ネズミの丸焼きはあるが…)のだが、バンパコン川が流れているだけあり、川エビはどこのレストランでも扱っている。
同店では、最大サイズの川エビは1kg(2匹)で1500B。さすがひとり一匹750Bは高過ぎるだろうということで、最小サイズ1kg(8〜10匹)を注文した。

chachoensao川エビは、小ぶりながら味噌もあり、なかなかの味わい。蟹もそうだが、甲殻類は食べ始めると手が止まらなくなってしまう。

ほかには、定番のトムヤムクン、ソムタム、ラープ・ムートート、プラーガポン・トート・マムアンを注文。

chachoensaoソムタムタイ

chachoensaoラープ・ムートートchachoensaoプラーガポン・トーット・マムアン中でもプラーガポンは臭みが全くなく、身もホクホクで旨かった。トムヤムは辛めで好みの味ではなかったが、全体的には合格点を付けられるレストランだった。

chachoensaoそして、日が暮れてからの雰囲気がまた抜群である。おっさん2人、しばし旅情に浸る。やはり旅はいい。川面に映る橋の姿を眺めながら、改めてそう感じたチャチュンサオの旅だった。

エカネック(ร้านอาหารเอกเขนก )

  • 営業時間:10時半〜22時 無休
  • 住所:32/19, Connecticut. Muang, Chachoengsao, Chachoengsao 24000.
  • 電話:081-949-1394,038-511-193
  • 料金:川エビ1kg1,000B、ラープ・ムートーット100B、トムヤムクン180B、ソムタム・タイ80B、プラガポン・トーット・マムアン350B
エカネック地図

見どころ満載のチャチュンサオ県

以上、チャチュンサオにある3体の巨大ガネーシャを全制覇! パワースポット三昧の旅をお届けした。上の動画は、3体のガネーシャを特集したタイのTV番組の映像である。ご興味がある方は、ぜひこちらもご覧いただきたい。

チャチュンサオは稲作が豊富な地域だけあり、どこでも美しい田園風景に出会うことが出来る。バンコク都心では味わえないのどかな雰囲気の中、ガネーシャ巡り、パワースポット巡りができるのもチャチュンサオならではの魅力だろう。
チャチュンサオには、今回ご紹介した3体のガネーシャ以外にも見どころは多い。仏教寺院で言えばタイでトップクラスの参拝客数を誇る「ワット・ソートーン」や、黄金に輝く「ワット・パクナム・ジョーロー」、珍しいステンレス製の「ワット・ファスアン」が有名である。また、百年市場も「バーンマイ」と「クローンスアン」の2つあり、とても一日では回りきれない。これらの寺院や観光地については、また改めてご紹介したい。

パワースポット大好き!という方だけでなく、バンコク近郊の有名観光地はほぼ全て回ってしまったという方や、週末の旅行先を探している方にもこのガネーシャ巡りの旅は楽しんでいただけると思う。
雨季も終わりに近づき、あと1ヶ月もすれば旅行のベストシーズンである乾季が到来する。ぜひ、チャチュンサオを訪れてみてはいかがだろうか。
それでは良い旅を!