9月26日、タイ警察は8月17日に起きたエラワン廟爆破テロ事件に関し、8月29日にバンコク東部のアパートで爆発物不法所持容疑で逮捕した男が、爆破テロ実行犯として行方を追っていた「黄シャツ男」だと発表した。この男が現場まで爆弾入りのリュックサックを運び、9月1日にカンボジア国境で逮捕された男が携帯電話を使って起爆したとの見解を示した。
1人目の逮捕者で、黄シャツ男と見られるアデム・カラダグ容疑者(弁護士は、本名はビラール・ムハンマドだと語っている)
2人目の逮捕者で、爆弾を起爆したと見られるユスフ・ミーライリー容疑者
タイ警察は、アデム・カラダグ容疑者(ビラール・ムハンマド)を逮捕後、黄シャツ男が乗ったとみられるタクシーからDNAを採取し、アデム・カラダグ容疑者のDNAを調べたが一致しせず、同容疑者は実行犯ではなく、爆弾の製造に関わっただけとの見方を示していた。なぜ、ここに来て同容疑者を黄シャツ男と断定したのだろうか?
1人目逮捕者を黄シャツ男と断定した理由
きっかけは、ルンピニ公園の防犯カメラの映像。
エラワン廟爆破後の逃走経路沿いにあるルンピニ公園の防犯カメラに、黄シャツ男がトレイに入って着替えをする姿が映っていた。カメラに映った男が1人目の逮捕者であるアデム・カラダグ容疑者(ビラール・ムハンマド)に酷似していたことで、事態が急転した。
警察は、再度アデム・カラダグ容疑者を取り調べ、本人が黄シャツ男で実行犯であると認める供述をしたということだ。
実行犯とみられる男の逃走経路沿いにあるルンピニ公園の防犯カメラに男がトレイに入って着替えをしたことを示す画像が残っていた。その着替え後の姿が8月29日に逮捕した男によく似ていたという。
8月末にバンコクで逮捕された男が爆弾テロの実行犯か | バンコク週報WEB
「監視カメラの映像、目撃者の証言、容疑者本人の供述により、アデムが黄色いシャツの男だと確認された」とし、「(同容疑者は)寺院に爆弾を置いた後、バイクタクシーを呼び、(近くの)ルンピニ公園(Lumpini Park)のトイレでシャツを着替えた」と語った。
バンコク爆発、拘束中の容疑者が「黄色いシャツの男」 タイ警察 | AFP BB NEWS
2人目の逮捕者であるユスフ・ミーライリー容疑者も、再度の取り調べにより犯行を認めているという。
ムハンマド容疑者が黄色いTシャツの男で、ラチャプラソン交差点近くにいたユスフ容疑者が携帯電話で爆弾を爆発させたとみて、再度取り調べ、警察によると、容疑者2人は犯行を認めた。
「最初の逮捕者が黄色いTシャツの男」 バンコクの連続爆弾テロ | newsclip
9月26日、タイ警察はアデム・カラダグ容疑者を立ち会わせ、現場検証を行った。同容疑者の供述に基づき、事件や逃走の様子が再現された。
警察は26日、自分が実行犯だと認める供述をした男を立ち会わせ、現場検証を行いました。 バンコクの爆弾テロ事件をめぐっては、爆発物を所持していた疑いで、すでに逮捕されていたアデム・カラダク容疑者が、自分が実行犯だと認める供述をし、警察が25日、殺人などの疑いで逮捕状を取りました。
バンコク爆弾テロ、「実行犯」を立ち会わせ現場検証 | MBS
タイ警察による爆破テロ事件の総括が行われた
9月28日、ソムヨット国家警察長官は爆破テロ事件に関してのこれまでの捜査を総括する記者会見を開き、1人目、2人目の逮捕者がエラワン廟爆破テロの実行犯だと断定した。
8月17、18日にバンコクで起きた連続爆弾事件で、ソムヨット・タイ警察長官ら警察幹部は9月28日、これまでの捜査を総括する記者会見を開き、すでに逮捕した外国人の男2人が死傷者約150人を出したラチャプラソン交差点の事件の実行犯と断定した。
「最初の逮捕者が黄色いTシャツの男」 バンコクの連続爆弾テロ | newsclip
事件の動機については、タイ当局による取り締まりで「ビジネス」を潰された人身売買組織による犯行というこれまでの見解を踏襲した。その上で、タイ軍事政権と政治的に対立する組織や個人が人身売買組織と手を組んでテロを起こした可能性は否定出来ないと、改めて言及した。
ソムヨット長官は会見で、中国の少数民族ウイグル族らをタイ経由で第三国に密航させていた犯罪組織が当局の取り締まりで打撃を受け、その報復として犯行に及んだとの見方を改めて示した。
その上で、「事件の背後には(実行犯を)雇った組織あるいは個人がいるとみている」と指摘。「ある組織が別の組織を使って攻撃を手伝わせた可能性がある」と述べ、タイ軍事政権と政治的に対立する組織や個人が密航組織と手を結んでテロを起こした可能性があるとの認識を示した。
「政治的動機」排除せず=バンコク爆弾テロ-タイ警察 | 時事ドットコム
タイ軍事政権としては、「テロ対象国」のレッテルは避けたい
タイの観光業は、GDPの約10%をしめる主要産業。「テロ対象国」というイメージが定着し、観光業に影響することを恐れ、軍事政権はこれまで「テロ」や「テロリスト」という言葉を避けていた。今回の記者会見でもそういった言葉は使わず、一部の人身売買組織や国内の反政府グループ(タクシン派)による犯行ということを強調していたようだ。
ソムヨット長官ら警察幹部は今回の記者会見で、これまで同様、「テロ」「テロリスト」という言葉を徹底して避け、いったんは認めたウイグル族の報復説からも再度、距離を置いた。タイは観光が主要産業で、「テロ対象国」というレッテルは是が非でも避けたいところ。また、「ウイグル族」は中国、トルコと外交的に微妙な問題に発展する恐れがあり、こちらも口にしたくない言葉だ。こうした事情から、軍政にとって都合のいい「人身売買業者」と「タクシン派」で幕引きを図ったようだ。
「最初の逮捕者が黄色いTシャツの男」 バンコクの連続爆弾テロ | newsclip
しかし、首謀者として報じられトルコに逃亡したとみられる男についてはどうなったのだろうか?
バンコク爆破テロ、ついに主犯格と見られる中国籍の男に逮捕状! | YINDEEDマガジン
行方についての続報がないが、この事件はこれで幕引きということになるのだろうか。
タイ警察の見解ではなく、容疑者による事件の動機についての話もこれまでに報道はない。今後、事件の動機について真相の解明を待ちたい。
それではまた明日!