タイ深南部と呼ばれるマレーシアとの国境に近いパッタニー県、ヤラー県、ナラティワート県とソンクラー県の一部。かつてこの地域には、パッタニー王国というマレー半島初のムスリム国家が存在していた。1909年にマレー半島を植民地支配していたイギリスとタイとの交渉によってパッタニー王国が南北に分断される形で国境線が確定し、タイの統治下に編入されて以来、イスラム過激派によるタイからの分離独立を求める武力闘争、テロ活動が今も続いている。
2012年にパッタニー県で起きたイスラム過激派による銃撃事件の映像
2014年にタイ深南部で発生したテロ事件は793件、死者330人、負傷者663人で、2004年以降最も少なかったということだが、それでも毎日2件以上のテロが発生し、1人が亡くなっている計算だ。2004年〜2014年までの累計の死者数は6,286人、負傷者は1万1,366人にも上る。
詳しくは以下ニュースクリップの記事を参照。
タイ国立ソンクラーナカリン大学(パタニー県)タイ深南部情勢監視センターによると、2014年にタイ深南部で発生したテロ事件は793件、死者330人、負傷者663人で、いずれも2004年以降で最も少なかった。
2004年以降の年間のテロ件数は2005年が最多で2174回、2013年は1298件だった。2004-2014年の累計の死者数は6286人、負傷者は1万1366人に上る。
2014年のタイ深南部テロ 件数・死者が2004年以降最少 | newsclip
タイ深南部の紛争の背景については、以下のサイトが詳しい。
タイ深南部紛争の概要と背景 | ASIA PEACEBUILDING INITIATIVES
このページで紹介されている2分でわかるタイ深南部という以下の動画が、深南部の問題が分かりやすく解説されているので、ぜひ一度ご覧いただきたい。
深南部は渡航中止勧告のエリア
テロが多発するこの深南部は、外務省海外危険情報では、レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)に指定されており、観光目的では決して訪れることができないエリアである。
日本の旅行ガイドブックでこの深南部を取り上げているのは、やはり「地球の歩き方」のみ。「地球の歩き方 タイ 2015〜2016年版」では、パッタニー、ヤラー、ナラティワートの3県を各1ページずつ以下のように紹介している。
タイ人イスラーム教徒の中心地 パッタニー
ハジャイ(ハート・ヤイ)からバスで約2時間。このあたりまで来ると、人々の会話はタイ語よりもマレー語になる。スカーフ姿の女性が運転するオートバイや、ムスリム帽をかぶった男性客の乗ったソンテウが行き交っている。ここは南部でも最も美しいと言われるクラーン・モスクがある。
地球の歩き方タイ2015〜2016年版より
森と山とビジネスの国境県 ヤラー
マレーシアと国境を隣接し、ゴム裁判が盛んで鳩の声を競わせる祭りが有名なタイ最南端の県。鉄道駅から市庁舎にかけてきれいに区画化されている。人口の90%がイスラム教徒だ。
地球の歩き方タイ2015〜2016年版より
タイ湾に面したムスリムの漁村 ナラティワート
タイ湾に面し、漁業が盛んな港町。町は小さく大きな見どころもないが、風光明媚なビーチがあり、タイ人の行楽客で賑わう。風がよく吹くので暑い時期でも比較的過ごしやすい。
喧騒もなく、のんびりと何日か滞在するのにいい町だ。
地球の歩き方タイ2015〜2016年版より
もちろん、各ページに注意喚起を促す一文も記載されている。
タイにありながらもムスリムが多数派であり、異国情緒が漂うこの深南部。行ってみたいが命の危険をおかしてまで行く勇気はない。でもどんなところなのか見てみたいと思っているのは僕だけではないと思う。
そこで今回は、美しい映像でこの深南部3県への旅行気分を感じてもらいたい。
モスクと歴史を感じる街並み、美しいビーチ、人々の明るい笑顔を見ていると、テロが頻発しているエリアとはとても思えない。
それでは、パッタニー、ヤラー、ナラティワートの美しい映像をご覧いただきたい。
パッタニー
タイ南部最大のモスク、クラーン・モスクでのラマダン礼拝の様子
ヤラー
ナラティワート
以上、知られざるタイ深南部3県の美しい映像をお届けした。
普段あまりこの深南部の情報に触れることはなく、恥ずかしながらこれほど美しい町だったとはこの映像を見るまでは知らなかった。ビーチや街並み、モスク、仏教寺院など、どれも魅力的だが何よりも人々の笑顔が一番印象的だった。
いつか誰もが気軽に訪れることができる日が来ることを願っている。
それではまた来週!