2011年4月23日、この日僕はタイに移住した。
バンコク・スワンナプーム国際空港に降り立ち、BTSパヤタイ駅で勤務先の社長と合流。そのままパヤタイからほど近い、ランナム通りにアパートの内見へ向かった。
1軒目で即決し、タイの地を踏んでからわずか2時間後にはアパートの契約が完了。結局、そのアパートにはそのまま3年3ヶ月暮らすことになった。
先日、久しぶりにランナム通りを訪れる機会があった。
タイに暮らし始めて丸7年、バンコクの様々な街を見てきたが、やはりランナム通りには独特の魅力がある。
観光地でも繁華街でも住宅街でもない。
とらえどころのない通りだが、一度暮らすと離れられなくなる引力のようなものがあるのだ。
今回から不定期でお送りするシリーズ「バンコク街歩き」の第1回は、僕がタイで初めて暮らした「ランナム通り」を取り上げたい。
イサーンの風が吹く
並木が印象的なランナム通り
ランナム通りは、BTSヴィクトリーモニュメント駅の下を走るパヤタイ通りとラチャプラロップ通りを結ぶ、およそ700mの通りである。
道の両脇には青々と茂った並木と老舗の食堂が立ち並ぶ。
特に目につくのがイサーン料理屋だ。
人気食堂「イサーン・ロムイエン」
ランナム通りにはイサーン料理を出す食堂と屋台が集まっていて、さながらイサーン街道といった様相を呈している。恐る恐る初めてチムチュムを食べたのも、ここランナム通りだった。
イサーン・ロムイエンと双璧をなす人気食堂「イサーン・ロットデット」
イサーン料理と一口に言っても、店によって味付けは異なる。
「ソムタムならここ、チムチュムならあそこ」という具合に、その日の気分によって食べ分ける楽しさがあり、3年暮らしても飽きることはなかった。
ランナム通りは僕にイサーン料理の奥深さを教えてくれた。
こちらは屋台のイサーン料理
数年前に移転したイサーン料理店「ティダイサーン」の跡地が、おしゃれカフェになっていたのには驚いた。
ティダイサーンはおしゃれカフェに
イサーン料理ではないが、人気タイ料理レストラン「クアンシーフード」の本店もランナム通りにある。プーパッポンカリーやオースワンが旨く、日本から友人が来た時などに重宝した。
クアンシーフード本店
ランナム通りの顔、キングパワー
通りの中ほどにはタイ最大級の免税店「キングパワー」があり、大陸からのツアー客を乗せた大型バスやトゥクトゥクがひっきりなしに行き交っている。
上の記事でも書いたが、キングパワーのフードコートにはバンコク都内の行列ができる食堂が出店している。
わざわざ行列に並ばなくても、ここに来れば有名店の料理が食べられる。素晴らしいコンセプトのフードコートだ。
これだけでも足を運ぶ価値があると思うので、ランナム通りに来ることがあれば、このフードコートにも立ち寄ってほしい。
バンコクで一番有名なパッタイ専門店「ティップサマイ」も出店
ランナム通りを離れて4年が経つが、その間、新たに二軒のホテルが建ち、僕が暮らしていた時よりも遥かに観光客の姿が増えた。すっかりツーリスティックなエリアになったようだ。
小規模なブティックホテルが立ち並ぶ
ローカルと外国人のバランスが絶妙
欧米人好みのカフェやバーもある
ランナム通りはローカルのタイ人、在住外国人、観光客のバランスが程よく、タイに来たばかりの自分にとっては、とても居心地の良い場所だった。
戦勝記念塔のロットゥー乗り場が近かったこともあり、気が向けばすぐにパタヤやアユタヤ、アムパワーなどに出かけられるのもありがたかった。
交通の要所、戦勝記念塔
BTSが開通し、オンヌットがベッドタウンとして開発されるまでは、ランナム通りは現地採用として働く外国人には定番の居住エリアだったという。
ソイの中には家賃5,000〜9,000B程度のアパートが立ち並び、日本人の姿もよく見かけた。
3年半暮らしたアパートは公園沿いで住環境が抜群に良かった
伊勢丹・セントラルワールドが徒歩圏内で、サイアムやMBKもBTSに乗れば10分もかからない。世界中からバイヤーが集まる巨大衣料品市場「プラトゥーナム」も歩いてすぐ。
移住当初から生活で不便を感じることはほとんどなかったと記憶している。
ランナム通りに住んでいた頃は、ナナ~アリー辺りが生活圏で伊勢丹には週3〜4回足を運んでいた。日本語書籍を扱う紀伊國屋書店の存在は本当にありがたかった。
セントラルワールドまで徒歩15分
巨大衣料品市場「プラトゥーナム」は徒歩10分
いつかまたランナムに
久しぶりに訪れたランナム通りは、観光客が増えたことで落ち着いた雰囲気とは言い難くなってしまったが、それでも自分にとって特別な街であることに変わりはない。
タイに暮らしで7年の間、
ランナム通り→スクンビット・ソイ11→ウドムスック→ラチャダー・ソイ7→プラカノン
と引っ越してきたが、最初に暮らしたランナム通りは今でも一番お気に入りのソイだし、特別な場所だ。
ここに来れば、文字通り右も左も分からなかった移住当時を思いを馳せ、初心に返ることができる。
またいつか、ここに暮らす日はあるだろうか。