先日、こちらの記事で次々に撤去されていく屋台・露店街について、まとめてご紹介したばかりだが、また衝撃的な露店撤去のニュースが飛び込んできた。
今後は、バンコク最大級の衣料品卸売市場として知られるプラトゥーナム市場周辺の露店が3月8日(火)に撤去されるというのだ。歩道の露店が通行の妨げになるというのがその理由ということだ。
バンコク・ポストによると、バンコク都庁はプラトゥーナム市場周辺の露店に、退去命令を下したという。

The Bangkok Metropolitan Administration has set March 8 as the deadline for vendors operating outside designated areas at Pratunam, one of Bangkok’s major shopping districts for clothing, to move to replacement venues.
First group of Pratunam vendors told to move by March 8 | Bangkok Post

エリアによって退去期限は異なるようだが、全ての露店のうち112の露店については3月8日(火)が期限となるようだ。その後、バンコク都庁管理下にある576の露店についても営業許可を取り消し、退去させる方針ということである。
既にラチャテウィー区長から露店店主たちへ退去期限については伝えられているという。

A total of 112 vendors had been told to move out by next Tuesday. Afterwards, the BMA would revoke permits to areas where 576 vendors currently sell their goods legally under BMA’s regulations.
First group of Pratunam vendors told to move by March 8 | Bangkok Post

この記事の目次


露店には3つの移転先が用意されている

ラチャテウィー区長は退去させる露店に対して、移転先として以下3つの市場を用意しているという。

  • バンカピ市場(Bangkapi Market)
  • ディンデーン市場(Din Daeng Market)
  • ペッブリー・ソイ29の私設市場

He said the district office had prepared three sites that could accommodate all the traders told to relocate. They are the Bangkapi market, the Tha Din Daeng Market and a privately owned market in Soi Phetchaburi 29.
First group of Pratunam vendors told to move by March 8 | Bangkok Post

英字版カオソットには、この退去命令についてのより詳しい情報が載っているので、ぜひこちらも参照してほしい。

Pratunam’s Flashy, Trashy Fashion to be Swept Away | KHAOSOD ENGLISH

さて、本当に3月8日(火)から撤去されてしまうのだろうか? 現在の状況はどうなっているのか? 直接、露店の店主たちに話を聞いてみたいと思い、本日プラトゥーナム市場に行ってきた。

プラトゥーナム市場ってどこ?

pratunam正面のビルがバイヨークスカイタワー

そもそもプラトゥーナム市場ってどこ? という方のために、簡単に場所だけ説明しておこう。
プラトゥーナム市場は、セントラルワールドや伊勢丹から歩いて5分ほどの距離に位置し、ラチャプラロップ通りとペッブリー通りの交差点から元タイ最高層のバイヨークスカイタワー周辺一帯に広がる超巨大衣料品市場である。

プラトゥーナム市場地図

世界中から安価な衣料品を目当てにバイヤーが集まり、周辺一帯は超多国籍な雰囲気に包まれている。衣料品が卸売価格で買えるため、観光客にも人気の市場でガイドブックにも必ず紹介されている。
僕がタイに来てから3年半勤めた前職の職場がプラトゥーナムにあり、個人的にはバンコクで最も思い入れのあるエリアのひとつでもある。

ratchapraropラチャプラロップ通りの歩道に立ち並ぶ露店

上の写真は、プラトゥーナム交差点(ペッブリー通りとラチャプラロップ通り)の歩道橋からの写真だが、ご覧の通りラチャプラロップ通りの歩道には、ビッシリと露店が並んでいる。

petchaburiペッブリー通りの露店

毎日多くのバイヤーや観光客でごった返すプラトゥーナム市場。確かに露店がビッシリと並んでいるせいで、歩くのが困難なときもあるが、「この活気がタイらしくていいな」といつも感じていた。それだけに今回の露店撤去の知らせは本当に驚いたし、残念で仕方がない。
実際のところはどうなのかと今回、以下3箇所の露店の店主に話を聞いてきた。

  • ①ラチャプラロップ通りとペッブリー通りの交差点付近にある露店
  • ②ペッブリー通りにある露店
  • ③ラチャプラロップ通りのバイヨークスカイ寄りにある露店

それではまずは、①のラチャプラロップ通りとペッブリー通りの交差点付近にある露店店主の話を聞いてみよう。

ラチャプラロップ通りとペッブリー通りの交差点付近にある露店店主の話

pratunam3人の店主たち

ー 3月8日(火)に、退去命令が出ていると聞きましたが、本当ですか?

店主:8日だって?! 知らないわよ。誰が退去するって?

ー そうなんですか? でもニュースで3月8日にこの辺り一帯の露店を退去させると言っていましたよ。

店主:私は絶対退去しないわ。ちゃんと税金も払っているのよ。あなたも反対してよー!

ー ちなみにもし退去するとしたら移転先は決まっているんですか?

店主:お上が用意しているのは、まったく人通りなんてない市場よ。そんなところに移転したら、私たちは生きていけないよ。ただでさえここ数年は、この辺りでも売上は減る一方で生きていくのに精一杯の売上しかないのに。

ー 移転先はそんなところなんですね。とにかく8日にまた来ますね。

店主:とにかく私たちは粘るわよ! あなたも応援してね。

どうやらこのラチャプラロップ通りとペッブリー通りの交差点付近にある露店が一番最初に退去させられるグループのようだ。話を聞いた限りではまったく了承していないようだったが、本当に8日に退去するのだろうか? 
それでは続いては②ペッブリー通りにある露店の店主に話を聞いてみよう。

ペッブリー通りにある露店店主の話

pratunam子供服を売る露店の店主

ー 3月8日(火)に、退去命令が出ていると聞きましたが、本当ですか?

店主:3月8日だって? そんな話は聞いていないよ。

ー そうなんですか。ニュースでやっていたのですが。

店主:3月8日に退去命令が出ているのは、その先の交差点付近の露店のはずだよ。この辺りはまだ正式には退去日は決まっていないんだよ。

ー なるほど。エリアによって退去日が異なるんですね。ここはまったくの未定なんですか?

店主:いや、今月末には退去しなければならなくなりそうなんだよ。近日中にラチャテウィー区と協議の場が設けられているんだが、そこで退去日が決まるはずだよ。

ー そこで正式に決まるわけですね。

店主:そうなんだ。最近はいろんなところで露店が撤去されているし、命令が出た以上はここに残ることは難しいだろうね。時代の流れと諦めるしかないよ。

ペッブリー通り沿いの露店は、まだ退去日が確定していないということだった。だが、3月中には退去することになると店主たちは考えているようだ。
最後に、③ラチャプラロップ通りのバイヨークスカイ寄りにある露店の店主に話を聞いてみよう。

ラチャプラロップ通りのバイヨークスカイ寄りにある露店の店主の話

pratunam衣料品を売る露店の店主

ー 3月8日(火)に、退去命令が出ていると聞きましたが、本当ですか?

店主:8日? いやここは8日には退去しないわよ。

ー そうなんですね。いつ退去予定なんですか?

店主:まだ分からないの。近くラチャテウィー区と話し合って、そこで決まるって聞いたわ。

ー おばさんは、ここで何年くらい商売をしているんですか?

店主:もう22年になるわ。ほかのお店も40年以上やっているところばかりよ。あの頃は、私もまだ若かったのよ。フフフ…

ー 22年ってすごいですね。昔と今ではなにか変化がありましたか?

店主:そりゃ昔の方が売れてたわよ。最近はからっきし売れないの。ほら見て、観光客も素通りでまったく見向きもしないのよ。ここ数年は、毎日こんな感じなの。

ー ちなみにこの露店は家賃は払っているんですか?

店主:もちろんよ。この辺りはだいたい1日200B〜ってとこね。安いでしょ? だから売上が下がってもなんとか食べていけるの。

ー 移転先についてはいかがですか?

店主:もし移転したら間違いなくここよりも家賃は上がると思うわ。ただでさえ生活が厳しいのに、今よりも大変になるかと思うと、先が思いやられるわ。本当はここでずっとやっていけたらいいのにって思っているのよ。

以上、プラトゥーナム市場周辺の撤去が予定されている露店店主のインタビューをお届けした。
やはりエリアによって、退去する日は異なるようだが、第一陣は8日に退去が始まるのは間違いなさそうだ。
どこの露店も商売は年を追うごとに厳しくなっている。次々とオープンするショッピングモールやデパートに集客を奪われているのだろう。
個人的には、露店で売っている商品が昔とまったく変わっていないということも、売上が上がらない理由のひとつだとは思う。洗練されていない感じがタイらしくていいといえばいいのだが、お土産物にしても、いつまでの木彫りの象やアルミ製のトゥクトゥクを売っていては、飽きられてしまうのも当然だろう。
だがそうはいっても、このプラトゥーナムの露店が消えてしまうのは本当に残念で仕方がない。
とにかく8日にまた改めてここを訪れたいと思う。続報を楽しみにしていてほしい。

それではまた来週!