5月13日にタイ国内ではCovid-19の新規感染者が初めて0人を記録。バンコクでは日常を取り戻しつつあるかのように見える。 ウイルス感染から身を守るため、飲食店や美容室などの接客業ではフェイスシールドの装着が義務付けられるようになった。 

バンコクでは路上でもフェイスシールドが売られていて、100Bほどで簡単に手に入る。 

だが、日本の医療現場ではフェイスシールドが不足している現状はご存知だろうか? 

その解決のため、タイから日本へフェイスシールドを寄贈する活動をしている人々がいる。 

今回はその活動を紹介するとともに、間近に迫った日本へのフェイスシールド寄贈(1,000個)に対する寄付のご協力をお願いする記事になります。

※6月11日を以てこのプロジェクトは終了いたしました。最終のご報告はこちらよりご覧ください。 

※5月19日時点の寄付の状況を追記いたしました。追記分はこちらより。

この記事の目次


日本の医療現場でのフェイスシールド不足は喫緊の課題 

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Made in Thailandのフェイスシールド

タイに住んでいる我々にとって、日本の医療現場でフェイスシールドが不足しているという話は身近ではなく、SNSでもあまり流れてこないかもしれない。 

だが、喫緊の課題として、ウイルスと戦う現場からは支援を求める声が上がっている。 

4月上旬には、日本医師会の横倉会長が厚生労働省を訪れ、新型コロナウイルス感染症患者を診療している医療機関への支援を求める要望書を提出。 

その要望書の中で、「フェイスシールドや感染防止用のガウン、N95マスクなどのPPEが不足しているために医療崩壊に直面している」と危機感を訴えている。 

また、日本最大級の医療機関検索サイト「病院なび」を運営する株式会社eヘルスケアが、臨床医師522名に対して行った大規模調査『今、日本の医療現場で本当に必要とされているのは?』では、半数以上が、「フェイスシールド、ゴーグル」が不足していると回答している。 

新型コロナウイルス感染症患者を診療する医療機関では、フェイスシールドの代用として透明のポリ袋を被り、診察を行っている医師もいるという。 

このような危機的状況を打開しようと、タイから日本の医療現場へフェイスシールドを寄贈するプロジェクト「FACE SHIELD Project Made in Thailand」が立ち上がった。 

活動の中心となるのは、日本在住の若井 麻也子氏と畠山 仁巳氏、そしてフェイスシールドの調達を担当するバンコク在住の織戸 直彦氏とサムットセーン 愛由実氏である。 

「FACE SHIELD Project Made in Thailand」立ち上げのきっかけ 

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発起人である若井氏に、FACE SHIELD Project Made in Thailandを立ち上げた理由を聞いた。 

−なぜ、このプロジェクトを立ち上げたのでしょうか? 

若井氏: 

世界中が大きな不安を抱えながら、新型コロナウイルスの危機を乗り越えようと努力する中、感染拡大防止、治療の最前線で働く医療従事者皆さまへの感謝を感じるとともに、医療従事者の方々の安全を確保することが何よりも大切だと感じていました。 

ネットなどを通して、医療従事者に向けての寄付や応援、支援の輪が広がる中、友人の畠山仁巳さんと、政府から支給される給付金を使って何か見える形での身の丈にあった支援ができないかと考えていたのです。  

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若井 麻也子氏(写真右)

そんな中、バンコク在住の織戸氏より、バンコクの市中でフェイスシールドが売られていると聞きました。 

一方、日本では医療施設で防護服やフェイスシールドが不足していて、なかなか行き渡らないことが連日訴えられていましたので、フェイスシールドを届けることを決めたのです。 

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Made in Thailandのフェイスシールド

何よりもスピード感が大切なプロジェクトであるため、バンコクの織戸さん、愛由実さんの協力と、それぞれのコネクションを有効活用することにより、実行に移すことができました。 

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Jupiter Logistics (Thailand)社がフェイスシールドを配送

タイから日本への配送もコロナショックによって便数が激減し、配送自体が難しい状況です。そこで、畠山仁巳さんの旦那さんからのご紹介で、日本航空関連のJupiter Logistics (Thailand)社に迅速な国際配送業務を対応していただいております。

すでに二度、タイから日本へフェイスシールドを寄贈

プロジェクトが立ち上がってからの動きは迅速だった。4月、5月と既に二度にわたり、タイから日本へフェイスシールドを寄贈している。

第1回(4月中旬)

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  • 配布数:50個
  • 配布先:
    ・国立がん研究センター中央病院
    ・M’sクリニック
    ・本郷耳鼻咽喉科クリニック
    ・きたなかこども成長クリニック
    ・タツノ(内科・循環器科)
    ・日本調剤本郷三丁目薬局

若井氏: 

まず第1弾として、サンプルとして取り寄せた50個を街のクリニックに届けました。個人クリニックではフェイスシールドをなかなか入手できず苦労していたようです。 

クリアファイルなどを利用して自作したフェイスシールドを利用していたとのことで、とてもありがたく受け取ってもらえました。  

国立がん研究センター中央病院には、マスクなどの寄付がたくさん届くのだけれども、フェイスシールドの寄付は初めてで、25個でもありがたいと受け取っていただけました。  

第2回(5月上旬) 

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昭和病院にフェイスシールドを寄付する畠山氏(写真左)

  • 配布数:600個
  • 配布先:
    ・公立昭和病院300
    ・文京区医師会90
    ・高山赤十字病院90 
    ・都立広尾病院40
    ・朝霞ケアセンターそよ風10
    ・有人会大泉学園クリニック20(透析専門)
    ・特定非営利活動法人 まごころサービス千葉10
    ・大阪府内の大学病院25
    ・文京区内のクリニックなど15

フェイスシールドを受け取った昭和病院の岡田医師からの声: 

お世辞じゃなくて軽くて使いやすいと、みんなが喜んでいます! 

うちの病院は感染症指定病院なので、2月の横浜のクルーズ船の頃からコロナの患者を見続けてきました。4月半ばの頃が一番ヤバくてうちの病院だけで30人以上のコロナ患者、うち重症が5人以上となり、ICUが逼迫しましたが、5月になってだいぶ落ち着いてきました。(とはいえまだ2名の重症患者がICUにいます) 

あと、救急で搬送されるほとんど全ての患者はいったんコロナ疑い患者として診療に入るので、そこが大変で、世の中のコロナ患者数が減ってもPPEやフェイスシールドの必要性はこの先ずっと変わらないと思います。 

みんなが感謝してます。ありがとうございました! 

フェイスシールドを受け取った高山赤十字病院 前田医師からの声: 

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フェイスシールド届きました! 

ありがとうございました。 

看護部ではやっぱり大好評で、装着してみながらお互いに可愛い、可愛いと讃えあっていました。 

シールドは日々の活動に有効に活用させていただきます。

フェイスシールドを受け取った文京区医師会長からの声:

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 これから始める文京区のPCR検査の現場などで使いたい。 

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フェイスシールドは診察だけでなく、手術中にも利用されている

このようにフェイスシールドを寄贈した医療現場からは、感謝の声が届いている。 

同プロジェクトでは、計650個のフェイスシールドを寄贈してきたが、まだまだ需要には追いついていない。 

これまでフェイスシールドの購入費用と運送費はすべて若井氏と畠山氏が負担してきたが、今後も継続的に寄贈を行っていくためには、資金援助が必要になる。 

間近に迫った第3回目のフェイスシールド寄贈にあたり、タイ在住のみなさまに寄付のご協力をお願いさせていただきたいと、織戸氏よりご相談をいただいた。 

第3回フェイスシールド寄贈にあたり寄付のお願い 

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中央:織戸氏 右:サムットセーン愛由実氏

FACE SHIELD Project Made in Thailandの第3弾として、フェイスシールド1,000個の寄贈を計画している。 織戸氏に活動への想いを聞いた。

織戸氏:

Made in Thailandのフェイスシールドが日本の医療機関で活躍しているのを見て、微力ながら協力ができたのではと感動しています。タイ国内で中国製フェイスシールドも流通しておりますが、今回はタイ国内で製造されたものを日本に送るということにこだわっています。

皆さんご周知の通り、タイ経済も低迷し、労働人口の4分の1である950万人もの失業者が出ているとニュースで見ました。今回のプロジェクトでは、タイに住ませてもらっている外国人である私達が少しでもタイ経済に貢献ができないかという思いもあります。

1口あたり約8個のフェイスシールドを日本に送ることが出来ます。大変厚かましいのですが、ご協力の程宜しくお願い致します。

第3弾での寄贈先医療機関は現在調整中で、また詳細が確定次第、随時更新させていただききます。

今までの医療機関へのヒアリングで、介護施設への医療物資供給がまだまだ間に合っていないと聞いており、高齢者施設やデイサービス施設などにも寄贈をしていきたいと思っています。

第3回フェイスシールド寄付の詳細

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  • フェイスシールド:1,000個
  • 必要金額:120,000B
  • 寄付1口:1,000B(1口あたり、フェイスシールド8個)
  • 合計:120口

寄付の振込先

  • 銀行名:Kasikorn Bank
  • 口座番号:066-8-72982-7
  • 口座名義:CLOUD BUTLER CO., LTD.

寄付に関するお問合せ先

  • E-mail:info@cloud-butler.asia
  • TEL:090-665-1188(織戸直通タイ番号)
  • LINE:@093wsgxv(クリックするとともだち追加画面に飛びます)

 お振込み頂きました後、大変お手数ですが、メール、お電話またはLINEにてご一報お願い致します。

第3回目のフェイスシールド調達、送付および配布については、その様子をこの記事内でアップデートしていく。 

【5月19日追記】寄付の状況

この記事の公開から4日が経ち、募金やフェイスマスクの寄付をいただいていますので、5月19日時点の状況をご報告させていただきます。

募金

  • 合計8名様
  • 23口
  • 23,000バーツ

フェイスシールドの寄付

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ヤマトエスロン(タイランド)株式会社にてフェイスシールドを受け取り

  • フェイスシールドの寄付1,000個 ヤマトエスロン(タイランド)株式会社

タイで歯ブラシなどを製造するヤマトエスロン(タイランド)株式会社より、フェイスシールドを1,000個寄付をいただきました。

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ヤマトエスロン(タイランド)社製のフェイスシールド

ヤマトエスロン(タイランド)株式会社は、今回のコロナウイルス感染症対策として、元々の文具製造ラインからフェイスシールドを開発。当記事を見て共感を持っていただき、自社製のフェイスシールドを寄付していただきました。

1,000個のフェイスシールドを寄付していただきましたので、皆様からいただいた募金で300個のフェイスシールドを追加で調達し、介護施設に寄贈をするべく計画中です。

寄贈予定先

  • 川口工業総合病院
  • 国立埼玉病院
  • 堀ノ内病院
  • 医療法人スマイル・クリエイト
  • TMG朝霞医療センター
  • 長野松代総合病院
  • その他、介護施設など

【5月25日追記】フェイスシールド1000個を寄付!

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5月25日、ヤマトエスロン(タイランド)株式会社より寄付をいただいたフェイスシールド1,000個を日本の医療機関に送り届けました。みなさまからいただいている募金およびフェイスシールド寄贈先の状況をご報告させていただきます。

募金

  • 合計11名様
  • 48口
  • 48,000バーツ

フェイスシールドの寄付

  • フェイスシールドの寄付1,000個 ヤマトエスロン(タイランド)株式会社

フェイスシールドの寄贈先(5月25日分)

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フェイスシールド寄贈の際に同封している手紙

  • 川口工業総合病院 400個
  • 国立埼玉病院 200個
  • 堀ノ内病院 200個
  • TMG朝霞医療センター 100個
  • アルファ矯正歯科クリニック 50個
  • 長野松代総合病院 50個
  • 合計 1,000個

織戸氏:
今回、大勢の方からのご賛同とヤマトエスロン社様からフェイスシールドご寄付を頂いたことで、プロジェクト発足から、わずか10日間で日本の医療機関に1,000個ものシールドを寄贈することができました。

病院側からも大変有難う御座いますと感謝のお言葉を多数いただいております。

ヤマトエスロン社からフェイスシールドを寄付していただきましたので、皆様からいただいた募金で300個のフェイスシールドを追加で調達し、介護施設に寄贈しようと動いております。

シールド調達費用、国際配送費用分のご寄付、まだまだ受け付けておりますので、本プロジェクトにご賛同いただけましたらご寄付の程、何卒宜しくお願い致します。

【6月11日追記】プロジェクトの最終報告

6月11日を以て、このプロジェクトは終了いたしました。募金およびフェイスシールド寄贈の最終報告をさせていただきます。

(募金状況)6月8日現在

  • 合計12名様
  • 63口
  • 63,000バーツ

フェイスシールドの寄付

  • フェイスシールドの寄付1,000個 ヤマトエスロン(タイランド)株式会社

フェイスシールドの寄贈先(6月8日分)

  • 1. 公益財団法人 がん研究会 100個
  • 2. 原クリニック 100個
    神奈川県川崎市のクリニック。近隣の医療機関へもこちらから配布予定
  • 3. 株式会社アオバメディカル あおば福祉サービス 100個
    神奈川県座間市の介護施設です。
  • 合計 300個

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公益財団法人 がん研究会

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原クリニック

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株式会社アオバメディカル あおば福祉サービス

織戸氏からの御礼メッセージ

当初の目標であったフェイスシールド1,000個を超える1,300個を日本の医療機関や介護施設にご寄贈することができました。タイ在住日本人の皆様、フェイスシールドをご寄付頂いたヤマトエスロン様のご協力があり、スムーズに配送まで終えることができました。

ご賛同、ご協力頂きまして大変有難うございました。

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寄贈先からいただいた感謝のお手紙

今回のプロジェクトを発足した当初、ネットでお声がけするだけで全く知らない人達から募金を集められるのか、反響は全然ないのではないか、知り合いにお願いするしかないかなと実は心配していました。

ですが、そんな心配とは裏腹に記事がオープンになってからすぐに、大勢の方々から応援のメッセージと共にご寄付やシールドの無償提供など頂くことができました。

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寄贈先からいただいた感謝のお手紙

 皆様からのご協力があって、応募開始からたった10日間で日本に1,000個を配布。追加の300個も配布が完了しわずか3週間でフェイスシールド1,300個をご寄贈する成果を出すことができました。日本の医療機関からは大変感謝されており、遠く離れたタイから母国へほんの少しでも協力することができたのではないかと感じております。

今回、ご協力頂いた皆様、大変有難うございました。

まだまだ未知のウイルスに対抗していかなければなりません。皆様のご健康を願っております。
織戸

タイで活動を行う織戸氏、サムットセーン愛由実氏について 

cloud butler

最後に、タイ側でフェイスシールドの調達および送付を担当する織戸氏とサムットセーン愛由実氏を紹介させていただきたい。 

そもそもこのプロジェクトが立ち上がるきっかけとなったのは、織戸氏のインスタグラムへの投稿だった。 

織戸氏は、昨年11月にリムジンサービス事業を行う「Cloud Butler社」を設立。年末年始のハイシーズンと重なり、事業はスムーズに立ち上がったが、3月に入り、Covid-19の影響で観光需要が消失。 

リムジンサービスの需要もなくなったことから新規事業として、 引っ越し事業「Cloud Moving」を立ち上げることに。 

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withコロナ時代の引っ越しとして、フェイスシールドを着用した配送スタッフの写真をインスタグラムのストーリーに投稿したところ、それを見た若井氏から相談があった、というのがこの活動のきっかけとなった。 

もし織戸氏が引っ越し事業を立ち上げなかったら、配送スタッフにフェイスシールドを着用させなかったら、このプロジェクトは立ち上がっていなかったかもしれない。 

サムットセーン愛由実氏は、織戸氏の会社「Cloud Butler」で共同代表を務めており、SNSなどを通じて同プロジェクトの情報発信している。 

Cloud Butler社では、フェイスシールドの販売も行っている。店舗や工場などでフェイスシールドが必要な方は、下記までお問い合わせいただきたい。

CLOUD BUTLER会社概要