今、タイのネット上で、タイ大手ビールメーカー・チャーンビールによる芸能人を使ったステマ(ステルス・マーケティング)が大きな話題になっている。そのステマの手法とは、ほぼ同時期にタレント達によってチャーンビールの瓶と共に写った、しかもロゴが表を向きはっきりと読み取れるような写真がSNSに投稿されたり、セレブ達によりイベントが開催されたりしたというものである。
※ステマとは、消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること。

thai alcohol
ステマと見られる投稿 Photo : Pantip.com

これに対し、競合のシンハビールがチャーンビールを強く非難する文面を投稿し、警察も事情聴取に乗り出すなど、大きな騒ぎとなっているのだ。
バンコク週報さんの記事を引用してご紹介する。

酒類の広告が禁じられているタイで複数の有名芸能人がチャーン・ビールのロゴがはっきり見える形でビールを飲んでいる写真をネット上に投稿しており、禁酒を呼びかけている団体などから「違法宣伝だ」と批判する声があがっている。
大手ビールメーカー、複数の有名芸能人を使い違法宣伝か | バンコク週報WEB

上の記事は、10月9日(金)のものだが、11日(日)には、チャーンビールはステマを行った事実はないと否定した。

チャーン・ビールが有名芸能人らにネット上にビールの写った写真を投稿させる形で違法宣伝を展開していると疑われている問題で、チャーン・ビールの担当者は10月10日、有名芸能人に報酬を払ってビールの宣伝をさせている事実はないと明言した。
違法宣伝の疑いをかけられている有名芸能人は合計24人。ポンサパット警察庁副長官によれば、アルコール飲料の宣伝はアルコール規制法で禁じられている違法行為であり、警察は近くこれら芸能人から事情を聴取する予定という。
チャーン・ビール「有名人を宣伝に利用した事実はない」 | バンコク週報WEB

そして、翌12日(月)には、事情聴取を受けた2人の芸能人が知人の依頼に基づきチャーンビールの普及拡大を目的に写真をSNSに投稿したことを認めた。ただし、チャーンビールから報酬を受け取ってはいないという。

チャーン・ビールが有名芸能人を使ってネット上で違法な宣伝行為を行ったとの疑いについて、警察はこのほど、有名芸能人2人が事情聴取に対し、「親しい友人のためにチャーン・ビールの普及拡大を目的にビールの写った写真をネット上に投稿した」と認めた。
だが、ビールメーカーから報酬を受け取った事実はないと主張しているという。ただ、警察は、「親しい友人」が誰なのかは明らかにしていない。
チャーン・ビール違法宣伝、芸能人2人が販促認めるも報酬は否定 | バンコク週報WEB

タイのネットメディアでの見解

このステマ事件に対するタイメディアの見解はどんなものだろうか? タイのネットメディア・DROIDSANDSのこのステマ事件に関する以下の記事を翻訳し、ご紹介したい。なお、この記事は現時点で、Facebook95,000シェア、85,000ページビューとなっており、このステマ騒動が大きな関心を集めていることが伺える。

アルコール飲料をウェブサイト・ソーシャルメディア上に投稿すると、罰金50万バーツまたは、禁錮1年の罫が科される
โพสต์รูปเครื่องดื่มแอลกอฮอล์ขึ้นเว็บหรือโซเชียลมีเดีย มีสิทธิ์ถูกปรับ 5 แสนบาทและเข้าคุก 1 ปี

droidsands
photo:droidsands.com

(以下、翻訳)

タイのアルコール業界最大手2社が巻き起こした今回の大騒動。著名人やセレブを起用しオンライン・ソーシャルメディア上で自社製品の宣伝を行ったことは、アルコール飲料販促法に違反しているため、警察は関係著名人に事情聴取を行う予定である。ポンパット・ポンジャルン警察大将は、一般人についても同じく、ソーシャルメディアに上記のような投稿を行った者を罰則するとした。

本件は、昨日(58年10月10日)消費者保護委員会事務局にて発表され、アルコール飲料販促については「アルコール飲料規定2551」に則り、罰則されるものとした。第32条に拠れば以下の通りである。

第32条 いかなる者もアルコール飲料の摂取を促すような宣伝、銘柄名・ロゴの提示を直接的又は間接的に行ってはならない。

全種類のアルコール飲料について、宣伝活動は飽くまでも社会に有益な情報の伝達に留めるものとし、商品やその包装を使用することは認められず、そのアルコール飲料のシンボルとなるものや事業会社のロゴを用いることのみ許される、とタイ王国法律で定められている。

法令第一項、第二項に関して、タイ王国外の広告については例外とする。
罰則は、「禁錮最大1年、または罰金最大50万バーツ、若しくは禁錮・罰金の双方」である。

現時点ではポンパット・ポンジャルン警察大将の一見解であるに過ぎないが、友人とのパーティーや食事会での写真をFacebookやInstagram、Twitter、更にはLineのタイムラインに公に投稿するのが好きな方々は、よくよく考えてからにした方が良いかもしれません。誰かにイタズラで通報され、本当に第32条に基づき処罰されてしまったら、笑い話では済みません。
一方で、なぜ今この件が話題になっているのか、経緯を知らない人はPantip.comで詳しい事のいきさつを見てみてください。以下簡単にまとめてみます。

チャーンビールがセレブやタレントを起用し自社製品を宣伝する投稿をさせた疑いがあるとされた。ほぼ同時期にタレント達によってチャーンビールの瓶と共に写った、しかもロゴが表を向きはっきりと読み取れるような写真が投稿されたり、関係セレブ達によりイベントが開催されたりしたことに対し、シンハビール代表トート・ピティ氏は競合相手を強く非難する文面を投稿。(これが発端となり、シンハも過去に同じようなことをしたことがある、と明るみに出てしまったのだが…)他詳細を語りだすと切りがないので、ご自分でPantipなりDrama-addictで記事を読んでみてくださいね。

(以上、翻訳ここまで)

はたして本当に一般人でもSNSにアルコールの写真を投稿するだけで罰せられるということがあり得るのだろうか?

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