バンコクの街角から屋台街が消えてゆく。
昨年、BTSトンロー駅前にあるスクンビット・ソイ38の屋台街が撤去されたことは、バンコク在住日本人社会にも衝撃を与えた。ソイ38の屋台街は、トンロー駅前というロケーションの良さから在住者、旅行者を問わず日本人に最も親しまれていた屋台街だった。
撤去の知らせ以降、ソイ38にはしばらくご無沙汰していたので、今はどんな状況なのかと日曜日に様子を見に行ってきた。現在のスクンビット・ソイ38の状況はご覧のとおりである。

sukhumvit soi 38スクンビット・ソイ38 2016年2月21日20時頃 筆者撮影

sukhumvit soi 38スクンビット・ソイ38 2016年2月21日20時頃 筆者撮影

sukhumvit soi 38スクンビット・ソイ38 2016年2月21日20時頃 筆者撮影

今も数軒の屋台が営業しているが、道の両脇を屋台が埋め尽くしていた以前の面影はない。営業している屋台の店主に話を聞くと、まだしばらくはここで営業を続けるということだった。

2014年5月のクーデターで政権を握ったタイ軍部は、バンコクだけでなくタイ各地で路上の屋台や露店の撤去に力を入れている。
ビーチリゾートのプーケットやフアヒンなどでは主要なビーチから屋台や行商人を締め出した。プーケットのビーチでは、ビーチチェアの代わりにビーチマットが置かれるようになった。

phuket kata noi beachプーケット・カタノイビーチ 2015年12月 筆者撮影

確かに、ビーチの行商人はしつこく対応が面倒という面もあるが、旅行者にとってはそんな行商人とのやり取りが暇つぶしにもなり楽しいものである。ぼったくりや押し売りは根絶されるべきものかもしれないが、こういった楽しさが消えていくのは寂しいものがある。

軍事政権に変わってから2年弱。バンコクからはどの程度の屋台街が姿を消したのか。
今回は、軍事政権以降に消えていったバンコクの屋台街と市場についてまとめてみたいと思う。

この記事の目次


2014年11月 シーロム通りの昼間の屋台が撤去

silom roadシーロム通り 写真はGoogle Street Viewより

昼はビジネス街の中心地、夜はタニヤ通りとパッポン通りを有するバンコク屈指の歓楽街としての顔を持つシーロム。BTSの高架下を走る目抜き通りであるシーロム通りは、昼も夜も屋台や露店で賑わっていた。だが2014年11月から、サラデーン交差点からナラティワート交差点までの区間は5時〜19時までの路上の屋台営業が禁止された。

バンコク・シーロム通りから屋台消える | newsclip 2014年11月3日付

2015年3月 泥棒市場周辺の屋台が撤去

klongthomクロントム市場周辺 写真はGoogle Street Viewより

2015年3月、バンコクの中華街(ヤワラート)近くにあり、泥棒市場として知られるクロントム市場周辺の屋台が撤去された。渋滞緩和が目的ということで、警察官500人以上を動員し強制撤去が行われた。

バンコク都庁、「泥棒市場」周辺の違法屋台撤去 | newsclip 2015年3月3日付

2015年10月 “バンコクのアキバ” サパーンレックが撤去

saphanlekサパーンレック市場 2015年9月末 筆者撮影

2015年10月には、バンコクのアキバとして知られたサパーンレック市場が撤去された。YINDEED MAGAZINEでもこちらの記事で撤去の一報を報じたが、大きな反響があった。
サパーンレックとは、ヤワラート通り(中華街)とマハチャイ通りの交差点の手前にあるオンアン運河の上に作られた市場で、フィギュア、ゲームソフト、モデルガン、コピーDVDなどを売る店が500店舗以上も密集し、バンコク屈指のオタクの聖地として知られていた。

saphan lek取り壊されたサパーンレック市場 2015年10月 筆者撮影

2015年10月 オンヌットスクエアが撤去

onnnut squareオンヌットスクエア Photo : オンヌットの日本人宿 すいかハウス

2015年10月16日、BTSオンヌット駅前のナイトマーケットとして近隣に住むタイ人のみならず外国人にも親しまれていたオンヌットスクエアが再開発のため撤去された。
オンヌットスクエアにあった屋台や露店の移転先を発見し、ご紹介したこちらの記事も非常に多くの反響をいただいた。跡地には、BTSビクトリーモニュメント駅前にもある「センチュリー」という複合施設が建設中である。

onnut squareオンヌットスクエア跡地 2016年2月21日20時頃 筆者撮影

2015年11月 王宮周辺の屋台街が撤去

maha rat roadマハラート通り 2015年10月 筆者撮影

2015年11月末、王宮とチャオプラヤー川の間を走るマハラート通りとプラジャン船着場一帯で違法営業をしていた屋台が撤去された。ワット・マハタートから王宮にかけてのこのエリアは、プラクルアン(お守り)を売る露店が軒を連ね、タイらしい光景に出会える個人的にお気に入りの場所だったのでショックは大きかった。

違法屋台撤去、バンコクの王宮周辺でも | newsclip 2015年12月1日付

2016年1月 ホイクワン・ナイトマーケットの屋台が撤去

huai khwang night marketホイクワン・ナイトマーケット 2016年1月19日 筆者撮影

2016年1月18日にホイクワン・ナイトマーケットの路上の屋台と露店が撤去されたことは記憶に新しい。こちらの記事でご紹介したが、今現在も営業しているのは店舗型のお店のみで屋台は復活していない。

ホイクワン・ナイトマーケットの最新の状況はこちらの記事でレポートしている。(2016年9月30日追記)

復活しつつあるホイクワン・ナイトマーケット | YINDEED MAGAZINE

2016年2月 チャオプラヤー川西岸のワット・ラカン周辺の屋台が撤去

wat rakangチャオプラヤー川沿いに建つワット・ラカン 筆者撮影

2016年2月、チャオプラヤー川西岸にあり、“鐘のお寺”として知られるワット・ラカン周辺の屋台が撤去された。newsclipによると、参道沿いや駐車場で違法屋台が営業し、参拝者から苦情が出ていたということが撤去の理由のようだ。

バンコクの違法屋台撤去、チャオプラヤ川西岸でも | newsclip 2016年2月17日付

以上、軍事政権以降に撤去されたバンコクの屋台街や市場をまとめてご紹介した。
一時的なのか、再開発によるものなのかで今後の状況は変わるが、屋台街が撤去されていく代わりにショッピングモールなどの開発は盛んである。スクンビットはもちろんのこと、ラチャダーエリアにも大きな2つのモールが相次いでオープンしている。

the street ratchada昨年12月、MRTタイカルチャーセンター駅近くにオープンしたTHE STREET

suanlum night bazaar ratchada昨年末、MRTラップラオ駅近くにオープンしたスアンルム・ナイトバザール・ラチャダー

今後も軍事政権が続く限り、違法営業の屋台や露店、市場の撤去が進むことは間違いないだろう。タイの名物というべき存在の屋台街が消えていくのは寂しい限りであるが、これも発展を続ける都市の宿命である。
「昔は良かった…」と懐かしんでも仕方ない。今、この時代にバンコクで生きる私たちは、今あるこの街を精一杯楽しむしかない。
ということで今後は、「バンコクの屋台街」、「バンコクのナイトマーケット」というシリーズを立ち上げ、順次ご紹介していきたいと思う。

それではまた!