2014年5月以降の軍事政権下で、路上の屋台・露店街の撤去が相次ぐバンコク。直近では、プラトゥーナム市場周辺の路上で営業する露店が撤去された。
この2年間で撤去された屋台・露店街については、以下の記事でご紹介したとおり。(再開発が理由の撤去も含む)

消えゆくバンコクの屋台街

そして先週、タイ地元メディアが報じたところによると、5月末を期限とし、シーロム通りの歩道で夜から営業する屋台・露店に対して、バンコク都から撤去命令が下されたという。

Say Goodbye to Night Market Vendors on Silom Road | Khaosod English

シーロム通りの屋台街は、2014年11月から日中(5時〜19時)の営業が禁止され、夜間だけの営業が許されていた。今度は、その夜間の営業も禁止し、すべての屋台・露店を撤去する方針ということのようだ。
それにしても先週に報じられ、今月末までとは急な話である。
本当に今月末で撤去されてしまうのか? 一度、露店店主たちに話を聞いてみたいと思い、今週水曜日の夜にシーロム通りの様子を見に行ってきた。

この記事の目次


シーロム通りの露店店主にインタビュー

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BTSサラデーン駅からナラティワート通りまで続く露店街(2016年5月18日筆者撮影)

2016年5月18日21時。BTSサラデーン駅付近のシーロム通りの歩道には、いつもどおり露店がびっしりと並んでいた。このシーロム通りの屋台・露店街は観光客をターゲットにしたナイトマーケットである。売られているものは、タイ雑貨、服、コピーDVD、アダルトグッズなど、ここでしか手に入らないというものはなく、観光客も冷やかしがほとんどだ。BTSサラデーン駅からナラティワート通り方面に進み、パッポン通りを超えると観光客もまばらになり、閑散としてくる。
最もナラティワート通り寄りで営業する露店店主に、まずは話を聞いてみることにした。

タイ雑貨を売る店主

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約30年ここで商売を続ける店主

ー 今月一杯で撤去命令が下されたと聞きましたが、本当に撤去するのでしょうか?

店主:今月一杯? 誰がそんなことを言っていたんだい?

ー 大手メディアが報道していました。まだ何も通達はないのでしょうか?

店主:メディアで報道されて、私たちも知ったんだよ。まだ直接バンコク都からは撤去という話は聞かされていないよ。来週、バンコク都側との話し合いの場が持たれる予定だから、詳しい話はその時に分かるんじゃないかな。

ー 来週、話し合いがあるんですね。ちなみにおじさんは、何年くらいここで商売をしているんですか?

店主:そうだな、30年くらいになるかな。

ー 30年?! それはすごいですね。最近の売れ行きはいかがですか?

店主:最近はまったくもってさっぱり売れないよ。この辺りまで歩いてくる観光客はほとんどいなくなってしまってねぇ。

ー 以前は一日にどの程度売れていたんですか?

店主:10年くらい前は、一日3,000〜4,000Bくらいの売上だったかな。今では500Bほどまで減ってしまったよ。まったく売れない日もあるんだ。

ー そんなに激減してしまったんですね。もし、撤去されることになったらどこに移転するんですか?

店主:どこに移転するかなんて、まったく分からないよ。そもそも撤去されることになるとは考えてもいなかったしね。

ー そうですよね。とにかく、また月末に伺いますね。ありがとうございました。

やはり、ナラティワート通り寄りまで来ると、閑古鳥が泣いており、インタビュー時もほとんど足を止める観光客はいなかった。
続いて、少しサラデーン駅寄りにある露店店主に話を聞いてみよう。

カービング石鹸を売る店主

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器用な手つきで黙々とせっけんを削る店主

ー 今月一杯で撤去命令が下されたと聞きましたが、本当に撤去するのでしょうか?

店主:みんなそう言って話を聞きに来るんだ。でも、まだなにも聞いてないんだよ。来週に話し合いがあると聞いてる。

ー やはりそうなんですね。もし、今月末で撤去ということになったら、移転先は考えていますか?

店主:いや、まったく考えてないよ。どうしたらいいかなぁ? ここも全然売上はないけど、観光客向けの商売なら、他よりはマシだとは思うんだよなぁ。

この石鹸売りの店主も、商売は苦労しているようだった。やはり来週露店店主側とバンコク都との話し合いの場が持たれることは間違いなさそうだ。
最後に、BTSサラデーン駅の真下、タニヤ通りの入口でアクセサリーを売る女性店主に話を聞いてみた。

アクセサリーを売る店主

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20分ほど熱心にインタビューに応えてくれた

ー ここで何年くらい商売をしているんですか?

 

店主:うーん、7年位かしら。昔は美容院で働いていたの。

 

ー 今月一杯で撤去命令が下されたと聞きましたが、本当に撤去するのでしょうか?

 

店主:今月末で撤去だって? 都からは直接聞いてないけど、そう報道されたことは知ってるわよ。でも、ちょっと急すぎるわ。せめてあと3ヶ月位猶予があればいいんだけどね。

 

ー そうですよね。たった2週間程度で撤去とは、時間がなさすぎますよね。

 

店主:そうでしょ。ほかの場所も延長されながらも最終的には撤去されているから、ここもそうなるんでしょう。
でも、露店が撤去されたらこの辺りは、暗くなって人通りも少なくなってしまうわよね。治安も悪くなってしまうんじゃないかしら。

 

ー 確かに。露店が撤去されることでそういう影響も出てきそうですね。月末にまた伺いますね。

 

店主:分かったわ。来週話し合いがあるらしいから、次に会った時にその結果を教えてあげるわ。

以上、撤去が予定されるシーロム通りの露店店主たちに話を聞いてみた。
これまでに撤去されたほかの屋台・露店街も、当初の撤去期限から数ヶ月延長されながらも、最終的には撤去されてしまった。ここシーロム通りの露店街も今月末という期限は延長されると思うが、遅くとも3ヶ月程度での撤去となるのではないだろうか。

タニヤ通りとパッポン通りというバンコクを代表する2つの歓楽街と夜の露店街。シーロムの夜を象徴する光景だけに、撤去されてしまうというのは非常に残念である。
シーロム通りもやられてしまえば、次はいよいよスクンビット通り(BTSナナ駅〜アソーク駅間)のナイトマーケットか? と考えてしまう。
観光客としてバンコクに遊びに来ていた時は、これらの露店を冷やかしながらブラブラと歩くのがとても楽しかった。せめてスクンビット通りだけは撤去とならないことを願っている。
今月末に再度、シーロム通りの露店街がどうなるか見に行きたいと思う。

タイは今日から3連休!
みなさん、よい週末をお過ごしください!
TGIF!!!