タイ王国外務省は、2015年11月13日からタイのマルチプル観光ビザの発給を開始すると発表した。
マルチプル観光ビザについては、今年8月にプラユット首相により承認され、長期滞在希望の旅行者は発給開始のアナウンスを心待ちにしていた。タイ王国外務省公式Facebookページでのアナウンスは以下の通り。

 

มาตรการตรวจลงตราประเภทนักท่องเที่ยวชนิดใช้ได้หลายครั้ง (multiple entry tourist visa)

Posted by กระทรวงการต่างประเทศ on 2015年9月21日

Thailand will soon grant multiple-entry visas to visitors to facilitate the forthcoming ASEAN Community and to boost Thailand’s tourism industry. The multiple-entry tourist visa (METV), costing 5,000 baht, will grant travelers multiple entries during a 6-month period, for up to 60 days per entry. All foreign nationals are eligible to apply for METV. Thailand’s METV will be available from 13th November 2015.

要約すると以下の様な内容である。

  • ビザの有効期間:6ヶ月間
  • 一度の入国で滞在許可日数は最長60日間
  • ビザ申請料金:5,000B
  • 2015年11月13日より、すべての外国人が申請可能

タイの日本語メディアやブログでもマルチプル観光ビザについて取り上げているので、参考にしてほしい。

タイの「マルチプル観光ビザ」が2015年11月に導入決定!長期滞在が事実上可能に。 | グロビジ!

タイ観光マルチビザが2015年11月13日より発給開始、ビザ申請料金は5千バーツ | タイランドハイパーリンクス

6カ月間に何度でも出入国可 タイが新観光ビザ | newsclip

今回のYindeedマガジンは、「マルチプル観光ビザとはどんな方に最適なビザなのか?」ということについて、観光ビザのシングル&ダブルと比較し、考えてみたい。

【10月27日追記】
マルチプルエントリーの発給開始に伴い、ダブルが廃止になるとのこと。
11月13日からタイのダブルエントリー観光ビザが廃止に!

【11月11日追記】
日本人は原則、マルチプルエントリーの申請・取得は日本のタイ大使館でしか行えないことに。
タイのマルチプル観光ビザ、日本人は原則日本でのみ取得可能に

この記事の目次


そもそもマルチプル観光ビザとは?

thai tourist visaタイの観光ビザ

マルチプル観光ビザ(マルチプル・エントリー・ツーリスト・ビザ)とは、ビザの有効期間内に何度でも入国が可能になるというもの。
つまり、今回発給が決まったタイのマルチプル観光ビザというのは、有効期間6ヶ月の間であれば、何度でも出入国可能で、入国のたびに最長60日間の滞在許可が得られるというものである。
現在のレギュレーションでは、ノービザおよび観光ビザで入国した場合、一度の滞在につき最長30日間の滞在延長が認められている。
このマルチプル観光ビザも、一度の入国につき滞在許可は最長60日間ではあるが、30日間の滞在延長を申請できるはずなので、60日+30日で最長90日までは滞在可能ということになるだろう。
ただし、マルチプル観光ビザで滞在延長をすると、結果として費用面では従来の観光ビザ・ダブルよりも高くついてしまうので現実的ではないだろう。
では、どのように運用するのがベターなのか? 以下6つのケースで滞在可能日数とそれに関わる費用を比較してみよう。

  • ①ノービザ
  • ②観光ビザ・シングル
  • ③観光ビザ・ダブル
  • ④観光ビザ・マルチプル【滞在延長を利用し、6ヶ月間で再入国1回の場合】
  • ⑤観光ビザ・マルチプル【滞在延長をせず60日毎に2回再入国の場合】
    ※追記:【滞在延長をせず3回再入国した場合】
  • ⑥観光ビザ・マルチプル【リエントリー(シングル)を取得し、再入国2回の場合】

① ノービザ(ビザなし入国)の場合

入国時の滞在許可日数:最長30日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:60日

  • 費用:1,900B(滞在延長申請料)

② 観光ビザ・シングル

入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日

  • 費用:2,900B(シングルビザ申請料1,000B+滞在延長申請料1,900B)

③観光ビザ・ダブル

(1回目の入国時)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日

〜タイ国外へ出国し、再入国する〜

(再入国1回目)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日
2回合計滞在可能日数:180日

  • 申請費用:5,800B(ダブルビザ申請料2,000B+滞在延長申請料1,900B×2)
  • 再出入国に関わる往復の交通費:2,000B(ラオス・ビエンチャンを想定)
  • 費用合計:7,800B

④観光ビザ・マルチプル

【滞在延長を利用し、6ヶ月間で再入国1回の場合】

(1回目の入国時)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日

〜タイ国外へ出国し、再入国する〜

(再入国1回目)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日
2回合計の滞在可能日数:180日

  • 申請費用:8,800B(マルチビザ申請料5,000B+滞在延長申請料1,900B×2)
  • 再出入国に関わる往復の交通費:2,000B(ラオス・ビエンチャンを想定)
  • 費用合計:10,800B

ご覧のとおり観光ビザ・ダブルと比較し、3,000Bも高くなってしまう。マルチプルの場合、滞在延長をする意味はないということだ。
では、滞在延長をせず一度の入国につき60日まで滞在した場合はどうだろうか。

⑤観光ビザ・マルチプル

【滞在延長をせず60日毎に2回再入国の場合】

(1回目の入国時)
入国時の滞在許可日数:最長60日

〜タイ国外へ出国し、再入国する〜

(再入国1回目)
入国時の滞在許可日数:最長60日

〜再度タイ国外へ出国し、再入国する〜

(再入国2回目)
入国時の滞在許可日数:最長60日
合計滞在可能日数:180日

  • 申請費用:5,000B(マルチプルビザ申請料)
  • 2度の出入国に関わる往復の交通費:4,000B(ラオス・ビエンチャンを想定)
  • 費用合計:9,000B

【追記:9月23日】
180日以上滞在したい場合、3回目の入国で与えられる滞在期間60日を迎える前に、タイ国外へ出国し、ビザの有効期間内(6ヶ月以内)に再入国すると、そこからさらに60日の滞在許可が与えられる。60日目に30日の滞在延長を申請すれば最長約270日間滞在できることになる。

(再入国3回目)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:最長約270日

  • 申請費用:6,900B(マルチプルビザ申請料5,000B+延長申請1,900B)
  • 3度の出入国に関わる往復の交通費:6,000B(ラオス・ビエンチャンを想定)
  • 費用合計:12,900B

再入国2回で180日滞在の場合、ダブルよりも1,200B高いという結果に。

では、最後に観光ビザ・ダブルで2回出入国したケースと比較してみよう。
比較する前に念のため説明しておくと、観光ビザ・ダブルでは再入国は1度まで。2回目の入国後は、滞在許可日数内でも出国した時点でビザは無効になる。
滞在許可日数内に、ビザを切らさずに出国したい場合は、リエントリー・パーミット(再入国許可証)を取得する必要がある。

re-entryリエントリー・パーミット

リエントリー・パーミットがあれば再度入国した際に、ビザの有効期間内までの滞在許可が与えられる。観光ビザに限らず、ビジネスビザでもリエントリー・パーミットを取得せずに出国した場合、その時点でビザは無効になってしまう。
リエントリー・パーミットについてはここでは詳しく説明しないが、シングル(1回有効、申請料1,000B)とマルチ(複数回有効、申請料3,800B)があり、ビザの有効期間内に4回以上出入国をする方は、マルチを取得したほうが費用面では得になる。

それでは、観光ビザ・ダブルでリエントリー(シングル)を取得し、2回出入国したケースと比較してみよう。

⑥観光ビザ・ダブル

【リエントリー(シングル)を取得し、再入国2回の場合】

(1回目の入国時)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日

〜タイ国外へ出国し、再入国する〜

(再入国1回目)
入国時の滞在許可日数:最長60日
入国後の滞在延長:最長30日
合計滞在可能日数:90日

〜再度タイ国外へ出国し、再入国する〜

(再入国2回目)
入国時の滞在許可日数:再入国1回目に与えられた日まで
合計滞在可能日数:180日

  • 申請費用:5,800B(ダブルビザ申請料2,000B+滞在延長申請料1,900B×2)
  • 2度の出入国に関わる往復の交通費:4,000B(ラオス・ビエンチャンを想定)
  • リエントリー・パーミット(シングル):1,000B
  • 費用合計:10,800B

このケースでは、⑤より1,800B高くなった。
180日間で2回以上出入国をする場合、マルチプル観光ビザを取得し、滞在延長せずに出入国を繰り返すという⑤の方法が費用面ではもっとも安いということになる。

①〜⑥を比較した結果、マルチプル観光ビザでメリットを享受できる方というのは、以下の条件に当てはまる方ということになるだろう。

  • 180日間に2回以上タイに出入国する必要がある
  • 一度の入国で、60日以上滞在する必要がない
  • 一度のビザ発給で、180日以上270日未満タイに滞在したい

毎月日本に一時帰国したり、周辺国も旅して回りたいという長期滞在者とって最適なビザになることは間違いない。
長期滞在希望だからとにかくマルチビザ!ということではなく、ご自身のライフスタイルに合ったビザを取得し、タイでの長期滞在を楽しんでほしい。

それではまた明日!