2016年5月、日本での就職を希望するタイ人が急増していることをご紹介した。

あれから丸2年、日本就職を希望するタイ人は、着実に増えているようだ。

今年1月20日にバンコクで開催されたWakuWaku Job Fair(以下、日本語表記「WakuWaku就職フェア」) には27社の企業が出展し、そのうち6社が日本国内から参加していた。

※本稿では企業を次のように分類して定義する。

  • 日系企業=タイ(海外)の日本資本の会社
  • 日本企業=日本国内に所在する日本資本の会社

この記事の目次


500名以上のタイ人日本語人材が集結!WakuWaku就職フェア2018

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WakuWaku Job Fair Vol.6(写真提供:TalentEx社)

去る1月20日、バンコクの日本語人材特化“WakuWaku就職フェア”が開催された。今回が6回目となる本イベントの結果詳細は以下のとおり。

  • イベント名:WakuWaku Job Fair Vol.6
  • 日時:2018年1月20日(土)
  • 会場:Grande Centre Point Terminal 21 (BTSアソーク駅直結)
  • 来場者数:557名
  • 参加企業:27社(在タイ日系企業21社、日本からの参加企業6社)
  • 共催:Thai Japan Business Network (Manpower)
  • 協力:株式会社マイナビ
  • 後援:在タイ日本大使館
  • HP:http://wakuwakujobfair.com/

会場には、朝から夕方まで次々とタイ人の若者が押し寄せた。その顔触れは、タイの一流大学出身者、日本語能力検定級保持者、日本留学経験者、日系企業勤務経験者など、日本語の能力、日本に関する知見を強みに働きたいと考える人たちだ。優秀な日本語人材を獲得しようと、日系・日本企業27社が参加した。

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WakuWaku Job Fair Vol.6(写真提供:TalentEx社)

今回特徴的だったのは、日本のマイナビ社と提携することで実現した日本国内6社の出展による“日本就職ゾーン”だ。従来タイ国内で働く人を主要なターゲットとしていた本フェアが、なぜ?タイ人を採用したいと考える日本企業が増えているのだろうか?今回はWakuWaku就職フェアの新しい取り組みであるこの“日本就職”についても取り上げる。

 

2年前の記事では、訪日インバウンドの影響がみられることをお伝えした。今もその影響が大きいのだろうか?WakuWakuを運営するTalentEx社の越陽二郎CEO(以下、越氏)に話を聞くと、日本国内の企業が抱える別の事情がみえてきた。

 

なぜタイで採用を行うのか?

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TalentEx社 越陽二郎CEO

「アジア諸国に高度人材を求めて採用に出向くというトレンドは、今に始まったことではないんです」と越氏は話す。日本国内の人材マーケットが縮小する中、中国・韓国・台湾をはじめとする国に出向き、優秀な高度人材を獲得する、という動きは先進的な企業では数年前から行われてきた。

その裾野が近年、東南アジアにも広まってきて、日系企業・日本語人材の多いタイに注目が集まっているそうだ。

「その動きは大手のみならず、ベンチャー企業や中小企業にもみられます」(越氏)。人材売り手市場と言われる日本。優秀な人材が大企業にとられてしまうため、優秀な人材の獲得に苦戦するベンチャー・中小企業は多い。

国内の限られた人材から働き手を探すより、タイで探した方が優秀な人材に出会える可能性が高いということだろうか?今回のWakuWaku就職フェアに出展した2社に話を伺った。

 

海外現地採用初チャレンジ-grooves社の事例

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㈱grooves 三浦彩子氏

企業と人材会社のインフラ構築を手掛ける株式会社grooves。現在は国内向けサービスがメインだが、将来的に海外にサービスを展開しようと考えている。そのコア人材となるような外国人の採用を考えていたところ、「日本で働きたいタイの優秀な方が最近増えている」という話を聞きつける。まずはタイで初チャレンジをしてみようと、今回の参加に至った。募集要項と結果は以下のとおり。

  • 勤務地:東京都港区南青山
  • 条件:日本語検定3級以上
  • 応募人数:53人
  • 面接者数:14人
  • 現地面接通過者数:5人

面接を担当した経営企画部コーポレートグループマネージャーの三浦彩子氏(以下、三浦氏)によると、日本人の仕事の仕方に対し「真面目」という印象を持ち、そんな日本人と一緒に仕事をしたいと語る人が多かったという。

「自分も真面目に働きたいという気持ちの表れだと感じました」(三浦氏)。

また面接をした全員から人当たりの良さを感じ、コミュニケーション能力・日本語能力の高さにも感心していた。「スピーキング能力が高く、また日本語特有の細かいニュアンスや機微まで察知することのできる人が多かったですね」。

営業・カスタマーサポート等、幅広く活躍してもらえるイメージが湧いたという三浦氏。「いずれ海外展開していく際には、スタートアップのコアメンバーとして活躍してもらいたいですね」。

また、これから増える可能性のある他の外国籍のメンバーの良き相談相手、ロールモデルとしての活躍も期待しているとのことだ。

 

ポテンシャル人材に効率よくリーチ-スカイライトコンサルティング社の事例

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スカイライトコンサルティング㈱ 石田澄恵氏

スカイライトコンサルティング株式会社は、グローバル人材を拡大していく中、2回目となるタイでの採用活動に臨んだ。1回目は自社で独自に大学などを訪問して採用活動を行っており、WakuWaku就職フェアへの参加は今回初。募集要項と結果は以下の通り。

  • 勤務地:東京都港区赤坂
  • 条件:日本語検定3級以上、ビジネスレベル以上の日本語または英語
  • 応募人数:50名
  • 面接者数:10名
  • 現地面接通過者数:2名

 

面接を担当した管理本部採用マネージャーの石田澄恵氏(以下、石田氏)が多くのタイ人に共通して強く感じたのは、日本で働くことに対する熱意。「売り手市場といわれる日本では、学生が受け身であることもしばしば。面接したタイ人の方たちは対照的で、積極的に働きたいという意欲が強く感じられた」(石田氏)。

「『タイ人』だから求めるもの、というのは実は特にないんです。コンサルティングという仕事をするうえでの素養があるかをみています」(石田氏)。
この点、今回WakuWakuを利用したことで、効率よく可能性のある人材にリーチできたという。「事前に情報をある程度集め、当日行けば自社の求めるレベルの人材がそろっているというのはいいですね」。

 

2社の事例から―高まるタイ人日本語人材への期待

これまで、日本でのタイ人採用の需要は訪日インバウンドが主だった。その観点からすれば、タイ語・日本語ができるという言語面での強みがあるのはいうまでもない。しかし、いまや日系・日本企業がタイ人材に期待しているのはそれだけではないということが2社の事例からみえてくる。世界を舞台にビジネスを行っていくうえでの優秀な外国人材の一人として、タイ人日本語スピーカーの活躍が期待されているのだ。

 

では、実際に職場でタイ人材はどのように活躍しているのか?過去にWakuWakuを通じてタイ人を採用したランドハウジング社(東京)に話を聞いた。

 

「いまやタイ人社員は欠かせない存在」―ランドハウジング社

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㈱ランドハウジング 橋本大吾氏

東京都杉並区で不動産の仲介業を行う株式会社ランドハウジング。タイ人留学生向けにも賃貸物件の仲介を行う同社は、2年前にバンコクでタイ人求職者向けに会社説明会を行った(主催:WakuWaku)。

当時1名だったタイ人の社員は、今では6名に増加。社員の約4分の1がタイ人ということになる。チュラーロンコーン大学やタマサート大学など、タイの一流大学で日本語を勉強していた人たちだ。

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2年前に行われたタイ人求職者向け会社説明会の様子

タイ事業部部長の橋本大吾氏(以下、橋本氏)によると、タイ人ならではの強みとしては、日本人では気づきにくいニーズに気づけること。タイ人の社員は、自分たち自身が日本に行って生活を始める上での困難を経験している。そのため、タイ人客がどのようなことに困っているか、想像しやすいのだ。 

そして、優秀な人材であるということは日々実感しているという。「理解力があり、勤勉。他の日本人社員が、『見習わなくては』という気持ちにさせられます」(橋本氏)。

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タイ語に対応したランドハウジング社HP

同社は最近、バンコクに海外初の拠点を設立した。タイならではの手続きやタイ人との交渉など、タイ人社員なしには難しかった事だ。こういったビジネスチャンスの拡大においても、タイ人社員は欠かせない存在となっている。

 

「日本だったら相当採用苦戦してます。売り手市場といわれますが、中小企業にはなかなか優秀な人材が集まってこない。タイの優秀な人材を採用できているので、今後の採用に関しては日本人にこだわる必要はないと考えています」(橋本氏)。

売り手市場と言われる日本。だが、ランドハウジング社をはじめとする中小企業は、国内での優秀な人材の獲得に頭を悩ませる。一方、タイに目を向けると、日本語を活かして日本で働きたいと願う優秀な学生が多く存在する。今後、彼らは日本企業にとってますます引く手あまたの存在となっていくだろう。

 

WakuWaku就職フェアの魅力とは?

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WakuWaku Job Fair Vol.6(写真提供:TalentEx社)

タイの日本語人材が集まる就職エキスポ、WakuWaku就職フェア。開始から3年たった今、タイ人日本語スピーカー、日系・日本企業の双方にとって、なくてはならないプラットフォームとなっている。

WakuWakuの3つの魅力を紹介しよう。

一度に多くの優秀な日本語人材と出会える

チュラーロンコーン、タマサート、カセサートなど、タイの名門大学から日本語能力検定級保持者が集結。その他、日系企業勤務経験者も多数参加する。その数、500人~1000人。タイ人日本語人材に特化した就職フェアでは他に類をみない規模だ。

事前に参加者とコンタクトが取れる

企業側は、事前にWakuWakuで参加者の履歴書が閲覧可能。出身大学、経験職種、日本語検定級など、気になるキーワードで簡単に求職者を検索・選別することができる。

さらに、ウェブ上のチャット機能を使って事前に求職者とコンタクトがとり、簡単な質問から面接のセッティングまですることも可能だ。チャット機能によってイベント当日までに互いを知り、信頼関係を構築するということは、企業と応募者とのコミュニケーション不足による採用トラブルを避けるという効果も見込める。

イベント後も求職者データベースが利用できる

参加企業はイベント終了後もWakuWakuを利用可能。毎月求職者がWakuWakuに登録するためイベント後の採用ニーズにも対応できる。

 

優秀なタイ人日本語人材を採用するならWakuWaku就職フェアへ

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「時代の自然な流れとして、今後も日系・日本企業の間で外国人材のニーズが高まっていくのは間違いない」(越氏)。

高度優秀な外国人材の選択肢の一つとして、タイ人日本語人材の重要性は今後ますます増していくだろう。

 

今回の就職フェアに受付スタッフとして参加していた私は、次から次へと来場する同年代の意欲あふれるタイ人たちの姿に圧倒された。「タイでこんなに優秀な人材がとれるんだったら日本人にこだわる必要ないですよね」という橋本氏の言葉を、身をもって感じた。

 

WakuWaku就職フェアは、今後も年2回のペースで開催を予定している次回は2018年8月31日(金)~9月2日(日)にサイアムパラゴンにて行われる「バンコク日本博2018(Japan Expo in Thailand)」内にて開催予定だ。


優秀なタイ人日本語人材が一堂に会する絶好の機会に、出展を検討してみてはいかがだろうか。

 

WakuWakuへの問い合わせはこちら。

https://waku.jbtalents.com/en/